最新記事

中国軍事

習近平、中国海兵隊に号令「戦争に備えよ」

Prepare for War, Xi Jinping Tells Elite Chinese Troops

2020年10月15日(木)15時10分
ジョン・フェン

全身全霊で戦争に備え、高いレベルの警戒態勢を維持せよと指示した(写真は9月) REUTERS/Carlos Garcia Rawlin

<水陸両面作戦の精鋭部隊として2017年に再編された海軍陸戦隊を視察し、国家の主権や海洋権益を守る重責を改めて強調>

中国の習近平国家主席は10月13日、広東省で人民解放軍の精鋭部隊である海軍陸戦隊(海兵隊)を視察し、「戦争の備え」に全力を注ぐよう指示した。

海軍陸戦隊は、習が指示した国防および軍隊改革の一環として2017年に再編が行われ、本誌が中国中央電視台(中国の国営テレビ局)の映像を翻訳したところによれば、習は視察の際に行った演説の中で、同陸戦隊を「水陸両面作戦の精鋭部隊」と強調した。

習が広東省を訪れた主な目的は、14日に行われた深圳経済特区の成立40周年記念式典で演説を行うためだった。深圳は香港と境界を接しており、商業とテクノロジーの中心地である深圳を重視する姿勢を示すことには、香港国家安全維持法(国安法)に対する抗議デモに揺れる香港に対して、中国支配の利点を強調する狙いもあるとみられる。

広東省訪問計画の一環として海軍陸戦隊の視察を行った習は、軍幹部からブリーフィングを受けた後に演説を行い、陸戦隊は「国家の主権の安全や領土の一体性を守り、海洋権益や海外権益を守る重責を担っている」と述べ、その重要性を強調した。

台湾のけん制強化が目的か

習は軍の指導部に対して、海軍陸戦隊は「全身全霊で戦争に備えなければならず、高いレベルの警戒態勢を維持しなければならない」と指示。また軍のその他の部隊とより緊密に協力して、陸戦隊が統合作戦に「完全に組み込まれる」ようにせよとも指示した。

中国海軍は東シナ海で実弾演習を繰り返しているが、これは中国が「分離領土」と見なす台湾への侵攻を想定した演習とみられている。約2400万人の人口を抱え自治を維持している台湾は、中国軍のこうした動きに対抗し、西部の海岸線で敵軍の上陸阻止を想定した軍事演習を行った。

台湾国防部の最近の報告によれば、9月以降、中国軍機が台湾の防空識別圏に進入する頻度が高まっているという。

こうしたなか、アメリカのドナルド・トランプ政権は今週、台湾向けに複数の武器売却計画を推し進める考えを明らかにした。台湾の蔡英文総統にとって、これは心強い動きだろう。

しかしトランプ政権のこの決定は既に中国政府の怒りを買っており、中国外務省の趙立堅報道官は、中国政府として「正当かつ必要な対抗策を取る」と警告している。

ロイター通信によれば、アメリカが台湾に売却を計画している武器には、移動式ロケット砲システム、空対地ミサイル、F-16戦闘機用のデータセンサー、ドローンや沿岸防衛ミサイルシステムが含まれる。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、25日に多連装ロケット砲の試射視

ビジネス

4月東京都区部消費者物価(除く生鮮)は前年比+1.

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中