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香港国家安全維持法

国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

Citing Safety, Hong Kong Democracy Groups Close Facing China Security Law

2020年7月1日(水)17時15分
デービッド・ブレナン

国際社会はチョウ(左)とウォンを見殺しにしたのか(写真は2019年8月、デモ扇動の疑いで逮捕され、釈放された2人) Anushree-REUTERS

<香港民主派が望んでいた国際社会からの助けはこなかった。中国で国家安全法が成立した今、身の危険もある彼らは民主化団体を脱退して身を隠した>

香港の著名な活動家たちが民主化運動を先導してきた団体を解散する決断を下した。これは、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が「香港国家安全維持法案」を可決したことを受けたものだ。高度な自治が与えられてきた香港で、中国政府の方針に異を唱える行為を実質的に違法とするものだ。

6月30日に解散を決めた「デモシスト(香港衆志)」は、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、羅冠聡(ネイサン・ロー)、周庭(アグネス・チョウ)らによって2016年に結成された香港の代表的な民主化団体。国家安全維持法案が中国で可決された今、活動を継続すれば直ちに投獄され罰を受ける可能性がある。ウォン、ロー、チョウの3名はいずれも、中国政府の侵略には負けず、香港に完全な民主主義を実現する戦いを続けるというが、昨年から香港で大規模なデモを続けてきた民主化勢力を中国が強権で押さえつけ、遂に勝利を収めたのだ。

民主化団体から脱退

中国で香港国家安全維持法が成立した6月30日の夜、ウォンとチョウはそれぞれ、ツイッターでデモシストからの脱退を表明した。ウォンは、自分が身を隠す間、香港に残された最後の自由を守る役を国際社会に託した。チョウは「生きてさえいれば希望はある」と書いた。いずれも死すら覚悟した悲痛なメッセージだ。

ウォン、ロー、チョウの3名は、2014年の民主化運動「雨傘運動」で注目を集めた。ウォンとローは民主化活動を理由に懲役刑を科されて収監され、残るチョウも2019年の政府に抗議するデモ活動の最中に逮捕された。3人とも、市民による直接選挙が行われている香港区議会の議員選挙への立候補を試みたが禁止された。

ウォンは、国家安全維持法が成立したことから、民主化運動活動家たちの身が危ないと警告した。ウォンは自身についても、10年間に及ぶ「政治犯としての収監」や、中国政府に身柄を引き渡されるおそれがあると述べた。「明日は誰にもわからない」と、ウォンは自らの「暗い運命」について記している。

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