最新記事

酷暑

今より格段に暑い夏がくる── 今後18カ月の温暖化対策が人類の命運を左右

2019年8月6日(火)17時01分

「いっそ死んでしまおうか」──。夜のコメディーの舞台にしてはおかしなタイトルだった。 最高気温の記録が更新された25日、パリのエッフェル塔を望む噴水で水浴びする市民ら(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)

「いっそ死んでしまおうか」──。夜のコメディーの舞台にしてはおかしなタイトルだった。

しかし、英国人スタンダップコメディアンのカール・ドネリーさんが環境問題のテーマをぶつけたタイミングは、結果的に完璧だった。

欧州を襲った熱波で最高気温記録が連日のように更新された先週、気候変動がもたらす存亡の危機を暗いユーモアで笑い飛ばしたドネリーさんの舞台は、イースト・ロンドンのバーに集まった観客のツボにはまったようだった。

今より格段に暑い未来が訪れる、そんな予感が2015年に合意された地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」の重要性を改めて意識させている。

異常気象、極地を覆う氷の溶解、そして予想を上回るペースの海面上昇など、あらゆる研究が気候変動の影響を明らかにするなか、協議に出席する交渉担当者は、パリ協定で合意された目標を意味ある成果に変えるため、時間との戦いに追われている。

「これから18カ月ほどの間に、実に多くのことが予定されている」と、米国の非営利団体セレスで気候とエネルギー問題を担当するスー・リード氏は言う。この団体は、持続可能な方向性に向かうよう企業や投資家に働きかけている。

「市民、政府当局者、そして民間セクターにとって、温暖化ガスの排出削減に向け、本格的に舵を切るのに極めて重要な時期となる」と、同氏は付け加えた。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年10月、世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えるパリ協定の目標を達成するには、遅くとも来年には排出量が減少し始める必要があると警告した。

現状の温暖化ガス排出量が続けば、気温は3度以上上昇する計算だ。国連のグテレス事務総長は、9月にニューヨークで開かれる国連気候アクション首脳会議(サミット)を前に、各国政府からより積極的なコミットメントを取り付けようと動いている。

チリで12月に行われる国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)に向けて機運を高めようと、ポルトガル出身のグテレス事務総長は各国首脳に対し、排出ガスの削減失敗は「自殺行為だ」と訴えている。

パリ協定以降、最大の節目となる締約国会議が英国で開催される2020年後半には、少なくとも理論上は世界の温室効果ガスの排出量を10年間で半減させる計画が実施段階に入っているはずだ。

「これから1年半の間に、気候変動を巡る外交は、パリ協定署名以以降で最も活発化するだろう」と、気候変動問題が専門の弁護士テッサ・カーン氏は予測する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ビジネス

日経平均は最高値、一時1100円超高 米関税や業績

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 追加緩和の必要性

ビジネス

英雇用6カ月連続減少、賃金は高い伸びを維持 中銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中