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百田尚樹現象

百田尚樹はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか――特集・百田尚樹現象(1)

THE INSCRUTABLE MONSTER

2019年6月27日(木)17時00分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

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『虎ノ門ニュース』のスタジオに入る百田をファンが「入り待ち」(4月16日) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

冒頭で百田尚樹にはギャップがある、と書いた。ギャップはそれだけではない。小説家と右派論壇人としての顔、読者への丁寧な応対と韓国や中国に対する攻撃的なツイートも二面性と言えるだろう。

ファンから見れば日本を愛する「ヒーロー」、批判する側からは間違った歴史を語る「ぺてん師」のように見える。評価も真逆だ。積み重なったギャップは、極端から極端へと振れ幅を増幅させ、百田の姿をますます見えない存在へと変えていく。

百田の実像に迫るべく、私は彼の著作を全て読み、過去のインタビューや雑誌の論説も可能な限り集めた。その上で、百田を重用する出版、テレビ関係者に取材を申し込み、3時間半にわたる本人のインタビューも収録した。

本人にもあらかじめ伝えたように、百田と私は政治的な価値観や歴史観がかなり異なる。「リベラルメディア」と言われる毎日新聞で10年ほど記者経験があり、これだけ売れているにもかかわらず周囲で『日本国紀』を読んだ人に出会ったことはなかった。つまり、私自身も現象を捉え切れていない1人なのだ。だから、知ろうとすることから始めた。「分からない」から出発し、当事者に当たり、事実から浮かび上がる「現実」にこそ、真相が宿るというのが私の基本的な考え方だ。

インタビューでも主張すべきはしたが、ディベート的に言い負かすための時間にはしなかった。彼の姿勢を丁寧に聞くことが、私が知りたい現象の本質を浮かび上がらせると考えたからだ。

百田現象から見えるのは、日本の分断の一側面であり、リベラルの「常識」がブレイクダウン――崩壊――しつつある現実である。

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