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アフリカに債務危機懸念──中国が「わな」を仕掛けたのか、批判は妥当なのか

2019年3月2日(土)11時45分
高岡秀一郎(時事通信社外経部編集委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

資源国にも、非資源国にも融資

CARIの統計を踏まえると、中国が最も資金を注いでいるのがアフリカ西部の産油国アンゴラだ。2000~17年、中国のアンゴラへの融資総額は428億ドルに上り、全体(1433億ドル)の3分の1に及んだ。

IMFによると、アンゴラの累積債務は2018年見通しでGDP比80.5%と、2010~15年の37.2%から大幅に増加。IMF理事会は昨年末、財政健全化や構造改革と引き換えに、アンゴラに対して最大37億ドルの金融支援を承認した。

中国が世界的に資源確保に奔走しているのはよく知られた話で、アフリカでも資源を担保とした融資を大々的に行っている。ただ中国の融資対象は、世界屈指の銅生産国ザンビアや、アフリカ第2位の産油国アンゴラといった、資源大国ばかりではない。

アフリカ東部のケニアは石油や鉱物資源に乏しいが、旺盛な内需を背景に、ここ数年は5~6%の高成長を遂げている。タンザニアやウガンダなど東部6カ国で構成され、地域統合を進めている東アフリカ共同体(EAC)の中核国という地政学的な重みもある。

そんなケニアでは2017年、中国の支援を受け、首都ナイロビとインド洋の港湾都市モンバサを結ぶ標準軌鉄道が開通した。開通自体は誠にめでたいのだが、その結果、ケニアが受け入れた2国間融資のうち、3分の1が主に鉄道事業に伴う中国からの借り入れとなった。IMFは、ケニアが抱える累積債務がGDP比率で2010~15年の45.9%から、18年には56.1%へ上昇すると見込んでいる。

活発な資金調達も債務増の要因に

ただアフリカ諸国の債務増は何もボルトン米大統領補佐官が「利己的な慣行」とする中国の融資ばかりが要因ではない。2008年に深刻化した金融危機とその後の景気低迷に対応するため、日米欧の主要中銀が相次いで異例の金融緩和を実施。世界的な「カネ余り」状態となる中、サブサハラ諸国は2010年以降、国際金融市場でのドル建て債発行を通じ、多額の借り入れを行ってきた。

サブサハラの順調な経済成長や社会的な安定が、投資家の関心を引き寄せたと言える。何よりも「援助から投資へ」という言葉の下、アフリカ投資が国際金融市場で一種のブームとなっていたことも見逃せない。IMFの地域リポートによれば、サブサハラ諸国による国際金融市場での起債は、2018年上半期だけで総額138億ドルと、17年通年の76億ドルを大きく上回った。

2018年末にIMFの金融支援を仰いだアンゴラでさえ、同年5月に30億ドル、7月にも追加で5億ドルを市場から調達していた。5月の起債では、3倍の応札があったという。市場のアフリカブームが、各国の財政当局を大いに甘やかしていた側面は否めないだろう。ちなみに、勢いに乗って借り入れた各国債務の償還期限のピークは、2019~20年と24~25年に訪れる。

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