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インドネシア・スラウェシ地震・津波の死者844人に 早すぎた津波警報解除が犠牲者増やした?

2018年10月1日(月)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)


地震と津波に襲われた被災地の様子を伝える現地メディア metrotvnews / YouTube


早すぎた津波警報解除に批判続出

今回の地震発生とほぼ同時の9月28日午後6時2分過ぎに日本の気象庁に相当する気象地球物理庁(BMKG)は中スラウェシ州周辺に「津波警報」を発令した。

しかし34分後にこの津波警報は突然解除されていた。警報解除と第一波の津波がドンガラ市やパル市に到達した時間の関係は正確には不明だが、BMKGの地震津波部長ラハマット・トリヨノ氏は「ネット上に出回っている津波の映像を見る限り、警報解除の前に津波は到達しているようだ」としている。

9月29日の記者会見で解除の根拠やタイミングを問われたトリヨノ氏は「警報解除は通常の規則に従ってとられた手段である」として特に問題ないとの姿勢を示した。その根拠とはパル市に最も近い潮位観測所からのデータに基づくものだったという。

ところがその潮位観測所はパル市から200km離れた場所に設置され「データは通常の潮位より6cm高かっただけだったので解除の手続きを取った」としている。パル市は過去1927年、1968年に津波があったが当時のデータが共有されておらず、それに加えて200km離れた潮位観測所のデータで判断せざるを得なかったというお粗末な状況が明らかになった。

津波の第一波の到達をBMKGは知らずに警報を解除した可能性が高く、津波到達後の解除だとしても問題は残るとみられている。

さらに地震でパル市をはじめとする被害を受けた地域では直後から一斉に停電してしまったことから、テレビやラジオ、警報を知らせるサイレンなどが一切機能せず、住民に警報が十分伝わらなかったことも被害を大きくした可能性があると指摘されている。

BMKGでは「今回のことはよく検証して将来の課題として検討したい」としているが、警報解除、警報伝達に関して真摯な反省を見せている訳ではなく、被災者からは怒りの声も上がっている。

刑務所から服役囚脱走、商店からは略奪

9月28日の地震で壁が崩れ、建物そのものの崩壊の恐れが出てきたパルの刑務所から服役囚560人の約半数が「脱走」したことも明らかになった。刑務所関係者は「建物に留まることより外に出る方が安全と思われたことや数人しかいなかった刑務官も自分の身を守ることに必死だったから」と地元メディアの取材に答えている。通信が途絶し停電も続いていることから刑務所長は「今のところ逃げた服役囚どころではない」と捜索には当面着手できない状況を強調している。

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