最新記事

ロシア

プーチン「欧州諸国、対米貿易問題で私の忠告無視した報いに直面」

2018年6月9日(土)11時20分

6月7日、ロシアのプーチン大統領(写真)は、毎年恒例のテレビを通じた国民との対話で、欧州諸国に対して自身が何年も前に米国が自己のルールを押し付けてくる危険を忠告したのに無視したことで、彼らは今その報いを受けていると強調した。モスクワで撮影。提供写真(2018年 ロイター/Sputnik/Mikhail Klimentyev/Kremlin via REUTERS)

ロシアのプーチン大統領は7日、毎年恒例のテレビを通じた国民との対話で、欧州諸国に対して自身が何年も前に米国が自己のルールを押し付けてくる危険を忠告したのに無視したことで、彼らは今その報いを受けていると強調した。

プーチン氏は、米国が先週欧州連合(EU)とカナダ、メキシコに適用した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限と、経済制裁を同列視した上で「われわれのパートナーは、輸入制限と制裁という逆効果を生む政策が自分たちに決して降りかかってこないと思っていたようだ。だが現在、現実化しつつあることが分かる」と語った。

プーチン氏は、2007年のミュンヘンにおける演説で、米国が例外扱いを要求する姿勢の高まりと、他国に自らのルール受け入れを強いるリスクを警告していたと説明。それがまさに足元で起こりつつある現象であり、当時はだれも聞く耳を持たず、こうした動きを止めようとしなかったと嘆いた。

「だから言ったのに」というメッセージはロシアの実業家向けにも発せられた。富豪のロマン・アブラモビッチ氏が英国でビザ更新に苦闘している問題について質問されたプーチン氏は、かねてから国内の実業家に海外に資産を置いたままにしておく危険を指摘していたと答え、「私はロシア企業が国内に資本をとどめておくべきだと提言していた」と話した。

プーチン氏はロシア経済については「正しい方向に進んでいる。力強い経済成長に向かう足取りをたどり始めた。今の成長は緩やかで小幅だが、落ち込んでもいない」と楽観的な見方を示した。

ロシア中央銀行は、今年の成長率を1.5─2%と予想している。

一方プーチン氏は、サッカーのワールドカップ開催中にウクライナが東部の親ロシア派に軍事攻撃を仕掛けるなら、ウクライナは苦痛を受けると主張。「挑発行為が起こらないと期待するが、もし起きればウクライナの全般的な国家としての地位に非常に深刻な影響が及ぶと思う」と強くけん制した。

またロシア軍部隊のシリア駐留は、国益が存在する限り続ける意向を明らかにした。

今年国民から寄せられた質問には、反政権指導者のアレクセイ・ナバルニー氏がなぜ大統領選の候補者登録を認められなかったのか、また軍に予算がつぎ込まれても一般国民には回すお金がない理由は何か、といった厳しい内容も含まれ、プーチン氏が回答を避ける場面も見られた。

[モスクワ 7日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スペースXの米スパイ衛星網構築計画、ノースロップが

ワールド

米高官、ラファ侵攻計画に懸念表明 イスラエルと協議

ワールド

イスラエルの長期格付け、「A+」に引き下げ =S&

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中