最新記事

アメリカ社会

「南北戦争」5年以内に起こる──米有権者の3割が懸念

2018年6月29日(金)17時00分
イワン・パーマー

今度は奴隷制度でなく移民制度が原因に?(写真は2013年7月に再現された南北戦争「ゲティスバーグの戦い」) Gary Cameron-REUTERS

<トランプの非人道的な移民政策に怒る人々、「フェイク」メディアに怒る人々、アメリカ社会の分断を反映>

アメリカの有権者の3人に1人が、今後5年以内に南北戦争のような内戦が起きそうだと予想し、10人に1人はその可能性が極めて高いと考えている。戦争の原因は、ドナルド・トランプ米大統領の政策だ。米世論調査会社「ラスムセン」が6月27日に公表した1000人を対象にした世論調査で、そんな結果が明らかになった。

不法移民の親子引き離しに対する抗議が続くなど、トランプ政権が4月に始めた「ゼロトレランス(不寛容)」政策は今アメリカで大問題になっている。政府関係者への嫌がらせや脅迫も相次いだ。その最中に実施された今回の調査では、全体の59%が、反トランプ派が過激な暴力に訴えるのが心配だと感じており、33%は「とても心配だ」と回答した。

【参考記事】米国土安全保障省に動物の死骸──移民親子引き離しで市民から反感、脅迫相次ぐ

これは、バラク・オバマ前大統領が就任2年目を迎えた2010年と同じレベルの不安だという。当時はアフガニスタン増派で多くの米兵が死に、国内では医療保険改革(オバマケア)をめぐる分断が進んだ頃だ。

19世紀の南北戦争では、奴隷制度をめぐる対立がもとで南軍と北軍に分かれた内戦になった。同じようなことが再び起こると予想したのは、民主党支持層では37%、共和党支持層が32%で、前者の割合が高かった。

人種別では黒人が44%で高めだったのに対し、白人は28%、他のマイノリティーは36%だった。女性と30代以下の若い世代は、男性と40代以上の世代と比べて、戦争を予想した割合が高かった。

もっと心配な報道機関への攻撃

また今回の調査では53%の回答者が、メディアのトランプの扱いを不満に思う人々がいずれ暴力に訴えると予想し、ほぼ4人に1人(24%)は「非常に不安」と回答した。

「支持政党を問わず、大多数の有権者は、反トランプ派が暴力による政変を起こすのではないかと不安を感じている。特に与党の共和党支持層は、非常に大きな不安を抱えているようだ」と、ラスムセンの報告書にある。「トランプに対するメディアの報道姿勢に批判的な人々が暴力に訴える脅威については、民主党支持層や無党派層も共和党支持層と同じくらい心配している」

トランプの大統領就任式直前の2017年1月15~16日に実施した調査では、アメリカが分断されていると感じる有権者は50%だった。それから約18カ月後の今、その割合は55%に増えた。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中