最新記事

中東

カメラマンが見たガザ衝突 「朝、友人に挨拶し、夜は彼の葬儀に出た」

2018年5月17日(木)14時33分

5月14日、ロイターのカメラマンがパレスチナ自治区ガザで行われた抗議行動の取材に出発したとき、車いすの知人と行き会ったという。写真はガザの境界付近で、イスラエル軍の催涙ガスなどから逃げるパレスチナ人抗議活動参加者(2018年 ロイター/Ibraheem Abu Mustafa)

ロイターのカメラマンが14日朝、パレスチナ自治区ガザで行われた抗議行動の取材に出発したとき、車いすの知人と行き会ったという。

「今朝、彼に『やあ』とあいさつした。その日の終わりには、彼の葬儀に出席していた」と、ロイターカメラマンのイブラヒーム・アブムスタファ記者は振り返る。

35年間に及ぶプロカメラマンとしてのキャリアの半分近くをガザのような狭い地域の取材に費やしてきた同記者にとって、こうした場面は、日常と職業が交差する瞬間だ。

ガザは、彼が暮らす場所であり、取材対象でもある。

14日はイスラエル軍の発砲によって50人以上のパレスチナ人が死亡。ガザにとっては、ここ数年で最も多くの死傷者が出た日となった。ガザのパレスチナ人は、境界の反対側にあるイスラエルが占領する先祖の土地への帰還を求め、6週間にわたる抗議活動を行っていた。

「今の起きていることに動揺している。だが同時に、自分の仕事はやり続ける」と、アブムスタファ記者は語る。

「自分の仕事と感情を分けなければならない。ある出来事を取材したら、その翌日にも同じような出来事が起きて、それを取材する。そのために、発生する出来事や状況に耐えられるような心構えを身につけた」

時に繰り返されるガザでのニュース展開も、彼の助けになっている。長年に及ぶ慎重な観察おかげで、これからどこで何が起きるのか、どこに立てば巻き込まれることなく、危険な現場取材を遂行できるかが、彼には分かるのだという。

「催涙ガスが着弾した瞬間、デモ参加者が反応することが分かる。それまで私に背を向けていた彼らが、こちらに顔を向けてくる。(催涙)ガスは白くて、特徴ある形で広がる。そこにタイヤが燃える黒い煙が混じると、白と黒のミックスになり、力強い写真が撮れる」

「私はこの場所を、死の場所と呼んでいる。ここには死がある。快適さはみじんもない。いつ何時、だれかが死んでもおかしくないのだ」と同記者は語った。

[ガザ 14日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、ウクライナ・イスラエル支援法案可決 24日

ビジネス

米、競業他社への転職や競業企業設立を制限する労働契

ワールド

ロシア・ガスプロム、今年初のアジア向けLNGカーゴ

ワールド

豪CPI、第1四半期は予想以上に上昇 年内利下げの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中