最新記事

人工知能

秋の夜長にAIと一緒にホラー小説創作はいかが?

2017年11月9日(木)15時45分
松丸さとみ

MITメディアラボが開発したAI「シェリー(Shelley)」

<MITメディアラボは、ツイッター上で人間とコラボしてホラーストーリーを書くAIを開発した。「シェリー」は14万のネット上のホラーストーリーを学習していて、1時間に1度、新しいホラー小説のさわりをツイートする>

「りんな」のツイッター&ホラー版?

秋の夜長、読書もいいが、自分で小説を書いてみるのはいかがだろうか? 自力で書き上げる自信がなければ、「シェリー(Shelley)」が手伝ってくれるらしい。

シェリー」とは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボが開発した、人工知能(AI)だ。フランケンシュタインの著者として有名な英国人小説家メアリー・シェリーにちなんだ名前で、ホラーストーリーを書くために作られた。しかもただ書くだけではなく、人間とコラボレーションして書き上げるという。

日本では数年前にLINEでチャットできるAI女子高生の「りんな」が話題になったが、こちらはそのツイッター&ホラー版といったところだろうか。

14万話を読破して誕生したAI「シェリー」

MITメディアラボの発表文によると、「シェリー」はまず、オンライン・コミュニティのレディットにある、ユーザーがオリジナルのホラーストーリーを投稿しているページを読んでトレーニングを受けた。「シェリー」がこのサイトで読んだ物語の数は14万話に上るらしい。

素人が書いた文章より、ホラーの定番作品のようなもので学んだ方が上達するのでは?と思うところだが、開発者の1人、マニュエル・セブリアン博士がタイム誌に話したところによると、スティーブン・キングやエドガー・アラン・ポーのような著名作家が書いたホラー小説をすべて読ませたとしても、わずか数メガバイトにしかならず、「シェリー」を作り上げるには不十分だ。前述の14万話だと、700メガバイト相当になるという。また、著作権の問題もあって、アマチュア作家が書いたものを読ませることにしたらしい。

毎時、新たなホラーストーリーが生まれる

「シェリー」が人間とコラボレーションするホラーストーリーは、ツイッター上で展開されている。「シェリー」は1時間に1度、新しいホラー小説のさわりの部分を書く。ハッシュタグ「#yourturn」(あなたの番)が入ると、人間に続きを書いて欲しい、という合図だ。人間はこれに返信する形で続きを書くわけだが、誰が参加してもいいらしい。ガーディアンによると、返信する側も「#yourturn」とハッシュタグを入れると、シェリーに続きを書いて欲しい、という合図になる。

ただし、ガーディアンの記者が試したところ、なかなか「シェリー」に自分の小説を拾い上げてもらえなかったらしい。どうやら「シェリー」のアルゴリズムは、「いいね」や「リツイート」をより多く集めたツイートを拾い上げるようにできているらしいのだ。この記者は、自分の書いたツイートに1度だけ続きを書いてもらえたが、数回のやりとりで終わってしまったという。

その短いコラボを通じてガーディアンの記者が感じたのは、「ある程度のロジックをもって話を続けることができるらしい」ということ。中には意味をなさない文章もあるが、つじつまが合う作品もあるという。そんな作品の1つとして挙げているのが、「Look Away」だ。「シェリー」と複数のユーザーによるコラボ作品なのだが、ガーディアンによると「このうち1人が人間でないということを忘れてしまうほどのでき」とのことだ。

「シェリー」が人間とコラボして書いた作品は、こちらのページに集められている。我こそは「シェリー」と協力しあって魅力的なホラー小説を書ける、と自信がある方は、チャレンジしてみはいかがだろうか。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中