北朝鮮が自賛する「国産」CNC加工装置、兵器開発の立役者に
写真は平壌の機械工場を視察する金正恩氏(2017年 KCNA/ロイター)
北朝鮮で2009年に発表されたある曲のプロモーションビデオは、新しい国民的ヒーローをたたえる内容だった。のちに、それが謎に包まれた同国のミサイル・核プログラムの中心的存在であったことが、外部の専門家の知るところとなる。
そのヒーローとは、世界各地の工場で広く使われているコンピューター数値制御(CNC)装置である。
グレーで巨大な箱の様な形のCNC装置は、事前にプログラム化された数値情報に従い、自動車や携帯電話から家具や衣服に至るまで、あらゆるものの複雑な部品を製造するのに使われている。工作機械を操作する人間のオペレーターでは成し得ない精度が特徴だ。
北朝鮮では、国産技術とリバース・エンジニアリング(分解と解析)の組み合わせの成果で、こうした装置が今では兵器開発において極めて重要な役割を担うようになっている。これらの装置が、他国の技術支援や輸入に大きく依存せずに、金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長が核爆弾とミサイル開発を推し進めることを可能にしている。
精密機器の取引を禁じる国際制裁を科されているにもかかわらず、CNC装置が、正恩氏のミサイル・核実験を加速させることに寄与していると、核兵器の専門家は指摘する。
「北朝鮮の遠心分離器や新型ミサイルは全て、CNCを使った工作機械によって作られた部品に依存している」と、米ミドルベリー国際大学院モントレー校東アジア不拡散プログラムディレクターのジェフリー・ルイス氏は指摘。「ミサイルと核兵器の製造において、欠かせない基礎技術となっている」
1996年以降、CNC装置は、軍事目的に転用可能な民間装置などの拡散防止を目的とした国際的な管理体制「ワッセナー・アレンジメント」に含まれている。北朝鮮はこの枠組みに参加していない。