最新記事

アメリカ経済

なぜか再びアメリカで銀行がつぶれ始めた

2017年5月29日(月)10時55分
ダニエル・グロス(ビジネスジャーナリスト)

米経済は失敗が失敗を呼ぶ時代に入った(閉鎖された支店のATM) Shaun Wilkinson/iStock.

<金融危機が再燃する兆しがあるわけではないが、困窮している個人や企業は増えている>

アメリカで再び、銀行の破綻現象が進んでいる。

米金融業界は08年の世界金融危機から何とか立ち直り、ここしばらくは平穏な日々が続いていた。国内各地の金融機関はFRB(米連邦準備理事会)のゼロ金利政策に助けられ、救済策や保証措置のおかげで体力を取り戻した。景気拡大に伴って、企業も個人もきちんと返済する良い客となり、最近の銀行はめったなことではつぶれない。

昨年、米連邦預金保険公社(FDIC)の加盟銀行の利益は計1713億ドルに達したと報じられている。破綻した銀行は年間で5行で、その支店数は合計18、資産総額も計2億7700万ドルにとどまる規模だった。

ところが今年に入って、既に5行が破綻した。しかも規模が大きい。4月末には資産47億ドルで29支店を持つニューオーリンズのファーストNBC銀行が、5月初めには資産10億ドル、支店数119のミルウォーキーのギャランティー銀行が閉鎖された。

一体どういうことなのか。念のために言うと、決してトランプ政権のせいではない。この現象は金融機関が景気循環に反応するという特徴の表れだ。11~16年には成功が成功を呼ぶ状態が続いた。だがその半面、失敗が失敗を呼ぶということもある。久々にそういう時期に入ったわけだ。

【参考記事】トランプ税制改革案、まったく無駄だった100日間の財源論議

ゼロ金利に甘えた末に

拡大95カ月目に入った米経済は、おおむね好調と見なされている。雇用統計で過去最長の79カ月にわたって雇用者数が増し、失業率は4.4%と低い。ただし銀行が貸し付けを少々拡大し過ぎると、借金を返せない人も出てくるのが世の常だ。

景気拡大が長続きすると銀行も消費者も企業も気が大きくなり、積極的に借金をする。貸し手は借り手を探し求める。懐に余裕のある消費者がひと通りローンで車や家を買ったとなれば、次に銀行は生活苦を抱える人にもお金を貸し、引き続き利益を上げようとする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中