最新記事

南シナ海

ドゥテルテの南シナ海「占領」計画は中国の一声で中止

2017年4月14日(金)16時18分
エレノア・ロス

ドゥテルテが南シナ海の島で国旗を揚げることはなかった Romeo Ranoco –REUTERS

<フィリピンの暴言大統領ドゥテルテが宣言した南シナ海の島々占領は、中国との友情を優先して中止された>

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、軍事同盟国のアメリカに別れを告げ、中国にすり寄ってきた。

だがドゥテルテは昨年6月の大統領就任以来、アメリカからの自立を宣言するだけでなく、南シナ海の領有権問題で利害が衝突する中国にも警告を発した。「どんな大国でも言いなりにはならない」と。当時のドゥテルテは、大国と友だち付き合いすることの意味を知らなかったのだろう。

ドゥテルテは先週、今月12日に控えたフィリピン独立記念日に、実効支配する南シナ海スプラトリー(南沙)諸島のパグアサ島(英語名ティトウ島)を自ら訪れて国旗を掲揚すると宣言した。

スプラトリー諸島では、フィリピンのほか、中国、ベトナム、台湾、マレーシア、ブルネイの6カ国が領有権を争っている。

「私は軍に対し、領有権を主張する多くの島を占領するよう命じた。9~10カ所に建物を建設する」とドゥテルテは言った。「そして独立記念日には、実効支配するパグアサ島で国旗を掲揚するかもしれない」

しかし、わずか数日後、国旗掲揚計画は中止になった。中国から警告を受けたのだ。

【参考記事】親中路線に舵を切り始めた放言ドゥテルテの外交戦略
【参考記事】中国を選んだフィリピンのドゥテルテ大統領――訪中決定

アメリカとも別れられず

サウジアラビアの首都リヤドで行われたフィリピン人コミュニティーの集会で、ドゥテルテは言った。「中国に『お願いだから、係争地には行かないでくれ』と言われて、大切な中国との友情を思って自分を正した。中国との友情を優先して、国旗は揚げない」

南シナ海は、毎年約5.3兆ドル(約578兆円)もの船荷が通る貿易の要衝。外交問題評議会(CFR)は、領有権を巡って各国が衝突するリスクは「大」と示唆している。

ドゥテルテは最近、中国、フィリピン、ロシアの3国が同盟を組めば世界が従うと自慢している。特に中国との関係は「新たな春」を迎えたと言う。

しかし、ドゥテルテはアメリカからも完全に離れられずにいる。今年2月にはアメリカから、擲弾発射器400個、狙撃銃85丁、無人航空機3機を含むテロ対策用の武器供与を受けた。

【参考記事】東アジアにおける戦略関係の転換期

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中

ビジネス

中国大手銀5行、25年までに損失吸収資本2210億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中