最新記事

中国社会

北京が痴漢対策でミニスカ禁止令

市当局が露出の高い服装に警告を発したが、本音は痴漢問題を女性に責任転嫁したいだけ?

2013年6月6日(木)14時31分
ベンジャミン・カールソン、ジェシカ・フィーラン

これもNG? 盗撮対策にもバッグや新聞で隠すなど自衛をアドバイス Barry Huang-Reuters

 暑くても我慢しなさい! 電車内で痴漢に遭いたくなければ、「ミニスカートやホットパンツ」は避けるように──北京市公安局は人々が薄着になる夏を前に痴漢対策ガイドラインを発表した。

 さらに、盗撮されないようにバスの2階席には座らないこと。「体をバッグや雑誌、新聞で覆って身を守ること」と、当局のアドバイスは続く。

 北京では08年の夏季オリンピックを機に地下鉄網が整備された。最近は人口増加もあって地下鉄やバスが混雑し、痴漢被害を訴える女性が増えている。

 では痴漢された場合はどうするか? ガイドラインは、バスが徐行運転あるいは停止したときを狙って、痴漢を突き飛ばしなさいと助言する。

 当局は、痴漢行為については被害女性自身で対処してほしいというスタンスだ。痴漢犯罪を裁判に持ち込むのは難しいからだと主張している。「バスや地下鉄に監視カメラがない限り、痴漢を立証するのは困難だ」と、北京市公安局のシン・ウェイは日刊紙チャイナ・デイリーに語った。「被害女性にどう対処するかについて、公共交通の職員を教育するのも難しい」

 確かに、北京の公共交通機関に助けを求めても無理なようだ。乗客が被害を報告するホットラインもないし、大半のバスは監視カメラを設置していない。「われわれの仕事は客を目的地まで届けることだけ」という態度だ。しかし、乗客の安全を保証するのも交通機関の責任だ、という声も少なくない。

 どうやら北京当局は、上海の地下鉄がちょうど1年前に女性から猛反発を受けた事件をもう忘れてしまったようだ。昨年6月、上海の地下鉄は透けたワンピースを着た女性の写真と一緒に「こんな格好で地下鉄に乗ったら、痴漢に遭わないほうがおかしい」と、女性の薄着に注意を促した。だが女性たちはこれを「性差別」だと猛抗議。地下鉄のプラットフォームで座り込みの抗議運動を行う女性も現れた。
 
 ちなみに中国では痴漢犯罪の最高刑はわずか15日間の拘留だ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

テスラ、ドイツで派遣社員300人の契約終了 再雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中