最新記事

インタビュー

イザベル・ユペールが語る、『エヴァ』の女性像

2018年07月12日(木)18時10分
※madame FIGARO.jpより転載

『エヴァ』撮影時のイザベル・ユペール。

カンヌ国際映画祭の女優賞に輝いた『ピアニスト』(2001年)や、ゴールデングローブ賞主演女優賞を獲得した『エル ELLE』(16年)など、多くの女優がしりごみをするような屈折した役柄を演じ、フランス映画界きっての演技派であり大女優と目されるイザベル・ユペール。そんな彼女の新作は、再び観客を動揺させるような高級娼婦の物語だ。

isabellehuppert20180712_1.JPG

『エヴァ』より、イザベル・ユペール(左)とギャスパー・ウリエル(右)。

ジェイムズ・ハドリー・チェイスの原作を、ユペールとは旧知の仲であるブノワ・ジャコーが映画化した『エヴァ』(18年)は、盗作作家の若きベルトラン(ギャスパー・ウリエル)が危険と知りつつも謎めいたコールガールに翻弄され、破滅の道を辿る。ベストセラーの問題作に挑戦した彼女に、その体験やキャリアについて、さらにいま映画界で話題の#MeTooムーブメントについて語ってもらった。

----本作の原作であるジェイムズ・ハドリー・チェイスの『悪女イヴ』は、ジャンヌ・モロー主演で一度映画化されていますが(『エヴァの匂い』1962年)、今回ブノワ・ジャコー監督からオファーを受けた時はどんな気持ちがしましたか。

「実は『エヴァの匂い』は一度も観たことがないの。ジャンヌ・モローの作品はもちろんたくさん観ているけれど、なぜだかこれは観ていなくて。今回ブノワから話をもらった時も、とくに彼女の作品を観ようとは思わなかった。きっとふたつの映画はとても異なるものになると思ったから。わたしがこの企画に惹かれたのは、まず脚本がおもしろいと思ったこと。そしてブノワと再び仕事ができるのも魅力だった。彼と組むのは今回が6度目となるけれど、最後に仕事をしたのは『Villa Amalia』(08年/日本未公開)で、ずいぶん時間が経っていたから、いい機会だと思ったの」

isabellehuppert20180712_2.JPG

ブノワ・ジャコー監督(左)とイザベル・ユペール(右)。


----脚本のどんな点に魅せられたのですか。

「サイコロジカル・スリラーだけど、それだけではない。ジゴロの若い男と年上の売春婦というのは興味深い設定だし、複雑で曖昧なところもある。さらにこうした設定を超えて、人間のふるまいや実存的な面を描いているところもおもしろいと思ったわ」

──娼婦の役という点に関してはいかがでしたか。

「映画は売春それ自体に関するものではなく、それは媒介にしか過ぎない。これは人間関係についての映画よ。人々の関係のなかには、性やお金の問題が関わってくるでしょう。だから人間関係を表現するのに利用できる。もちろん原作自体がそういう話でもあるし。

原作を読んで驚いたのは、エヴァというキャラクターが想像していたよりずっと現代的であったこと。どこかオールドファッションなファム・ファタルを連想していたのだけど、原作におけるエヴァの描写はとても洗練されていて、脚本を読んだ印象とあまり変わらなかった。そしてなぜだか、とても身近に感じたわ。たとえば彼女のイージーゴーイングであまり深く思い詰めないところとか。それに女性らしさというものに対しても、彼女はあまりこだわっていない。それが逆に彼女を魅力的にしていると思うけれど、そんなところにも共感できた。もちろん、原作も脚本もベルトランの視点から描かれているから、彼女はミステリアスな存在だけど。最後にオチがあるとはいえ」

isabellehuppert20180712_3.JPG

若く美しい新進作家ベルトラン(ギャスパー・ウリエル)は謎の娼婦エヴァ(イザベル・ユペール)に惹かれていく。


──エヴァの毅然として、上辺からは内面が想像できないところなど、あなたが演じた『エル ELLE』のミシェルというキャラクターと似たところがあると思わせられました。

「確かに、ふたりとも被害者のようにふるまわないという点では似ているわね。そしてどちらも孤独な女性であり、その点はエモーショナルだわ。もちろんふたりとも表面上はそう見えない。でも注意深く眺めると、そのほころびというのは感じられると思う」

──そして両作品とも、女性のセクシュアリティをユニークなやり方で表現していますね。

「確かにそのとおりだけど、同じやり方で扱っているわけではない。ミシェルはもちろん彼女の境遇にハッピーなわけではないけれど、エヴァの場合はとても現実的な女性で、お金のためと割り切っている。コールガールは彼女にとってツールに過ぎない。いかにセックスを愛情と切り離せるかということだと思う。でも彼女は、コスチュームを脱いでふつうの姿でベルトランといる時に、まったく幸せを感じていなかったかといったら、そんなことはないと思うの。私はふたりが会話をする、レストランの長いシーンが、とても繊細な感情のやりとりがあって好きだわ」

isabellehuppert20180712_4.JPG

ベルトランは次作の題材という名目でエヴァに近づくが......。

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ米大統領、FRBの利上げ「喜ばしくない」

ビジネス

ホンダが「クラリティPHEV」日本であす発売、電動

ワールド

中国、為替変動にカウンターシクリカルな措置で対応=

ワールド

米NEC委員長の習氏批判、「衝撃的でっち上げ」=中

MAGAZINE

特集:人生が豊かになるスウェーデン式終活

2018-7・24号(7/18発売)

「自分らしい生き方を最後まで全うしたい」と望む世界の高齢者が注目する北欧式「最後の断捨離」とは

人気ランキング

  • 1

    インドネシア、住民死亡の敵討ちでワニ292匹を虐殺 一番怖いのはヒトだった

  • 2

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 3

    ブラジルの街中でサソリの大繁殖が始まった?昨年死者200人

  • 4

    「何か来るにゃ...」 大阪地震の瞬間の猫動画に海外…

  • 5

    収入が減る一方で家賃は上がる──日本が過去20年で失…

  • 6

    「乱交」で種の境界を乗り越えるサル

  • 7

    ロシア、兵士や戦車を隠す「透明マント」を開発

  • 8

    「お母さんがねたので死にます」と自殺した子の母と…

  • 9

    美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ…

  • 10

    自殺教唆ゲーム『ブルーホエール』プレイ後、子供2人…

  • 1

    金正恩の背後の足場に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

  • 2

    「何か来るにゃ...」 大阪地震の瞬間の猫動画に海外が注目 アメリカでは19世紀から軍で研究も

  • 3

    インドネシア、住民死亡の敵討ちでワニ292匹を虐殺 一番怖いのはヒトだった

  • 4

    タイ洞窟の少年たちの中には、無国籍だが5カ国語を話…

  • 5

    オウム死刑で考えた──日本の「無宗教」の真実

  • 6

    キャサリンVSメーガン! 英王室に勃発したファッシ…

  • 7

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 8

    米ロ会談、プーチンの肩持った裏切り者トランプにア…

  • 9

    美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ…

  • 10

    金正恩「デート禁止令」に、北朝鮮大学生の不満が爆発

  • 1

    史上最悪の「スーパー淋病」にイギリス人男性が初感染、東南アジアで

  • 2

    美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの

  • 3

    「何か来るにゃ...」 大阪地震の瞬間の猫動画に海外が注目 アメリカでは19世紀から軍で研究も

  • 4

    噴火がつづくハワイ・キラウエア火山──空から宝石が…

  • 5

    悪臭で飛行機を降ろされた男性、体組織が壊死する感…

  • 6

    金正恩の「美少女調達」システムに北朝鮮国民が怒り

  • 7

    金正恩の背後の足場に「死亡事故を予感」させる恐怖…

  • 8

    世界が激怒する中国「犬肉祭り」の残酷さ

  • 9

    【悲報】感電して牛が死に、飼い主が死に、助けよう…

  • 10

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
Pen編集部アルバイト募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

特別編集 ジュラシックパークシリーズ完全ガイド

絶賛発売中!