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高松の「実家じまい」に25年、1800万円かかった松本明子さんが語る教訓

2022年6月30日(木)11時00分
内埜 さくら(フリーインタビュアー、ライター) *東洋経済オンラインからの転載

――松本さんはバラエティ番組で、家族仲がいいとお話されていました。良好な家族関係も、実家じまいに時間がかかったことに影響しているでしょうか。

たしかに、父と母を亡くした頃は相当落ち込んで、実家じまいをするなど考える余裕がなく、しばらくおいておいた面はあります。

私は兄が10歳年上で、両親が40歳近くになって生まれた子どもで、溺愛されて育てられました。父とは、私が結婚後も一緒にお風呂へ入るほど仲良しでしたね。

私が幼稚園時代は父と母、私の3人で夜な夜なバーやスナックへ繰り出していた思い出も。父はお店に行くと「明子、歌え、歌え」と言って私に歌わせる。するとママさんやホステスさんが褒めてくれて、10円や20円を私にくれる。その場で私は、カルピスをボトルキープする子どもでしたね(笑)。

母は若い頃、芸事を職業にしたいと思っていた人で、私が歌う姿に目を細めていました。いま思えば、酒場で歌う体験が私の芸能界へ入りたい! と思う原点だったのかもしれません。

親を2人とも亡くした喪失感は想像以上

ところが、「上京して歌手デビューしたい」と伝えると、父は大反対。「自分の目が届く範囲で歌っているならいいけれど、実家を離れて上京するなんて絶対にダメだ」と。甘々なところと厳しいところ、両極端をもっている父でした。私の夢を応援してくれたのが、母です。「明子のやりたいことをやらせてやって」と、援護射撃してくれたんです。母が父を説得してくれなければ、私は上京できなかったかもしれません。

――バラエティ番組『DAISUKI!』(1991年4月14日から2000年3月26日まで放送。日本テレビ)では、松本さんが共演のお2人に毎回、腕を絡ませる姿が印象的でした。

あの番組では、秀ちゃん(中山秀征さん)や直ちゃん(飯島直子さん)に、ずっとくっついていた記憶があります。末っ子ですから、甘えん坊なんです。

父を亡くしたときももちろんつらかったですが、41歳(2007年)のときに母を亡くしたときは、心身ともに大きく負担がかかりました。同性だからか、人生の道しるべを失ってしまった感覚もあり、「この先、どうすればいいんだろう」と、心が路頭に迷ってしまったというか。

親を2人とも亡くした喪失感は想像以上に大きく、「私ってこんな人だっけ?」と、自分でも驚くほど打ちひしがれ、3年間ほどは両親がこの世にもういないという現実に、なかなか向き合えませんでした。

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