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米経済

中間選挙後の米国経済の行方 注意が必要な先行きのリスク要因とは

2018年11月13日(火)07時10分
真壁昭夫(法政大学大学院教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

11月9日のニューヨーク証券取引所 Andrew Kelly-REUTERS

11月6日、注目の米中間選挙が終わり、結果は事前の予想通り、上院は共和党・下院は民主党のねじれ状態になった。今後は、トランプ政権の経済運営と米国経済の動向に注目が集まるとみられる。

今年4~6月期の米国の実質GDP(国内総生産)成長率は、前期比年率で4.2%だった。7~9月期、成長率は同3.5%に低下したものの、米国経済は依然として堅調な展開を続けている。ただ、この間、米中貿易戦争の影響から中国経済は減速が鮮明となった。それを受けて、業績予想を下方修正する日本の国内企業も出始めた。中国経済の減速はドイツを中心に欧州各国の景況感も悪化させている。

これからの米国経済の展開を考えると、2017年の減税の効果が徐々に剥落するに伴い、経済の減速(成長率が低下すること)は避けられないだろう。一方、賃金は明確に増加しており、それは個人消費を支えるだろう。短期間で米国経済が失速する(成長率がマイナスに落ち込む)展開は想定しづらい。

注意が必要なのは、先行きのリスク要因が増えていると考えられることだ。その一つが、米IT先端企業の代表格である「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の成長期待の低下だ。中間選挙の結果、トランプ政権の政策運営が難しくなることの影響も無視できない。

もしGAFAを中心に米国の株価が大きく下落し、そのタイミングで米中貿易戦争やトランプ政権の法案を通しにくくなることが懸念されるのであれば、世界経済の先行き不透明感が高まる可能性は否定できない。

当面は堅調な展開続く

足元、米国経済はトランプ減税の効果によって好調さを維持している。昨年12月、トランプ政権は連邦レベルの法人税率を35%から21%に引き下げた。この結果、企業業績が押し上げられた。また、減税は個人消費を増加させ、4~6月期の4.2%成長につながった。この時点で米国経済は世界経済の中で「独り勝ち」の状況にあった。

それ以降、成長率の水準は低下している。なぜなら減税の効果は一時的なものだからだ。効果が剥落するにつれ、経済が減速することは避けられない。10~12月期、実質GDP成長率は前期比年率で3%を下回ると考える経済の専門家は多い。7~9月期の米企業決算では前年同期比で27%程度の増益が見込まれ、実際の決算も予想に沿ったものとなっている。一方、10~12月期は、7~9月期に比べ増益率が低下するとの見方がほとんどだ。

成長率が2%後半になったとしても、その水準は米国経済の実力=潜在成長率を上回っていると考えられる。FOMC(連邦公開市場委員会、FRB〈連邦準備制度理事会〉が金融政策を決定する会合)参加者の予想では、潜在成長率は1.8%だ。減税により米国の賃金と企業の収益等が増加基調となったことを理由に、潜在成長率は2%をやや上回る水準にあると推計する専門家もいる。米議会予算局(CBO)の推計によると、2018年から2022年までの潜在成長率は実質ベースで2.0%だ。

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