最新記事

企業

在宅勤務は権利かさぼりかでヤフー内紛

会社に自分用の託児所を作っておきながら、社員には在宅勤務を禁じたCEOの言い分

2013年2月27日(水)16時19分
フレヤ・ピーターセン

反発も何のその 会社で仕事をするのがいやなら辞めろと母親たちに命じたメイヤー Pascal Lauener-Reuters

 マリッサ・メイヤーが経営難に苦しむヤフーのCEO(最高経営責任者)に就任したのは昨年7月のこと。このときすでに10月の出産予定を公表していたメイヤーだが、就任にあたって自分のオフィスに託児所を作っていたことが最近になって明らかにされた。

 費用は彼女が自腹で払ったという。だが問題は、この事実が報じられる直前、彼女が社員の在宅勤務を禁じる通達を出して社内で大きな反発を招いていたということだ。

 37歳のメイヤーは、彼女が「ヤフーズ」と呼ぶ社員に向けた通達の中で、仕事はオフィスで行わなければならず、それが「できない」または「したくない」なら会社を辞めるべきだとした。

 グーグルの元副社長で、ヤフーでは5年間で1億1700万ドルを受け取る予定の彼女だが、こうしたダブルスタンダードは働く母親を中心とする社員たちの怒りを買っている。彼らは、メイヤーには仕事と子育てを両立させることの難しさが理解できないのだと非難する。

 メイヤーがヤフーのトップに就いたとき、彼女は妊娠6カ月で、出産後はすぐに職場復帰すると明言していた。そして予定通り10月に生まれた生後5カ月の息子の世話と仕事を両立させるため、彼女はオフィスに託児所を作るという選択をしたのだろう。

 社内から反発の声が噴出したメイヤーの在宅勤務禁止令だが、ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、彼女の決定に賛同するあるヤフー社員の声を紹介している。「個人的には自宅作業禁止のルールには賛成だ。ヤフーではかなり多くの社員がこの制度を悪用しており、大きな問題となっている」

 この社員は、オフィス以外の場所で働く社員が多く存在する現状について、「彼らはどうしようもないくらいサボってばかりいて、会社からの連絡にも答えず、ヤフーの仕事とは関係のないことに多くの時間を使っている」と明かした。

 メイヤーの禁止令を報じて騒動の発端となったのは、テクノロジー専門ブログ「オールシングスD」の記事。だが記事は、メイヤーは長期にわたる大幅な業績悪化からヤフーを立ち直らせようとしていると指摘する。さらにメイヤーの社員に対する苛立ちを代弁する、あるヤフー社員の言葉が紹介されている。

 この社員によれば、メイヤーは勤務中の食事代を無料にしたりiPhoneを支給したりと、仕事に打ち込める制度を積極的に導入しているという。それなのに、本社の駐車場は毎朝遅くまでいっぱいにならず、逆に午後5時を過ぎればすぐに空になってしまう。彼女がいたシリコンバレーのライバル会社などではあり得ないことだ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ビジネス

3月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.6%=

ワールド

パレスチナ国連加盟、安保理で否決 米が拒否権行使

ビジネス

スペースXの米スパイ衛星網構築計画、ノースロップが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中