コラム

酔ってもいない司法長官に、なぜかトランプは美しく見えている(パックン)

2020年02月28日(金)19時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
酔ってもいない司法長官に、なぜかトランプは美しく見えている(パックン)

Barr's Bromance / ©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<自画自賛の大統領と彼にほれこむ司法長官――翌朝起きて正気になるアルコール・マジック(Beer goggles)なら良かったけどバーの場合("Barr" goggles)は違うみたい>

日本の義務教育では絶対に教えてもらえない英語の慣用表現をここで教えよう!

酔っぱらったときは、性的対象のストライクゾーンが妙に広くなってしまうよね。かわいくない人もかわいく見えてしまうアルコール・マジックは、英語でbeer goggles(ビア・ゴーグル=お酒メガネ)という。ぜひ義務教育の教科書にも入れよう。

例えば友達が、ある人をhandsome(ハンサム)でgreatlooking(とても格好いい)、gorgeous chest(美しい胸をしている)と言ったとしよう。だが、その人が不自然な肌色をした、体重100キロ以上もある「アラセブ」のおじいさんだとすれば、友達の血中アルコール濃度を測りたくなる。さらに「オリジン」も「ビヨンセ」も発音できず、国や歴代大統領の名前を知らない人のことをthe best words(最高の言葉遣い)ができる! 貿易や軍事、借金など、20以上の分野について地球上の誰より、おそらく歴史上でも一番詳しい! stable genius(安定した天才)だ! と言ったら、友達をすぐタクシーに乗せて帰すだろう。

どう考えても褒め過ぎだが、これらは全てドナルド・トランプ米大統領に対して、実際になされた発言なのだ。発しているのは......トランプ大統領ご本人だ。

風刺画にあるのは、うぬぼれているトランプを口説くウィリアム・バー司法長官。彼の「Barr goggles(バー・ゴーグル)」を通すとトランプが妙にきれいに見えるようだ。ロシア疑惑に関しては、複数の問題行為を指摘する報告書を読み終える前に、バーは「トランプは無実」と判断。さらに捜査自体を非難し、トランプの側近数人が既に有罪になっているのに、「無罪を証明する証拠しかない」と主張。ウクライナ疑惑に関しては、情報当局の監察官が「緊急事態」と判断し、弾劾のもとにもなった内部告発の内容(後に米政府監査院〔GAO〕が違法行為と認定した)をバー率いる司法省は問題ないと結論付け、告発状の存在自体を隠した。さらに最近、司法妨害などの罪に問われたトランプの長年の友人ロジャー・ストーンの裁判で、トランプの要望どおり、検察官の求刑を取り消して量刑の軽減を求めた。大統領の権力乱用を取り締まるはずの司法長官がそれを許しているだけではなく、助長しているのだ。相当ほれているようだね。

ビア・ゴーグルの特徴は、酔いがさめると視力が戻ること。翌朝起きたときに、相手を見て後悔するのが定番だ。溺愛してしまっているバーはもう諦めるが、どうかアメリカ国民が11月の大統領選挙までに目覚めてくれることを祈る。

【ポイント】
HAS ANYONE EVER TOLD YOU HOW BEAUTIFUL YOU ARE?
君がどんなに美しいか、誰かに言われたことはある?

YOU MEAN BESIDES ME?
私以外にってこと?

<本誌2020年3月3日号掲載>

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2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

プロフィール

ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

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