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アングル:中国株「熱狂でない上昇」に海外勢回帰、強気相場は半ばとの見方も

2025年12月02日(火)14時30分

写真は株価指数のグラフを表示する電光掲示板。2025年10月、北京で撮影。REUTERS/Maxim Shemetov

Samuel Shen Jiaxing Li Rae Wee

[シンガポール/上海 1日 ロイター] - 中国株に外国人投資家が戻ってきている。割安なバリュエーションと安定したリターンが誘因だ。ファンドマネジャーは2年越しの騰勢が景気の不安定な局面を乗り切ると見て工業株を選好し、変動の大きいハイテク株を保有している。

上海と深圳市場の主力銘柄で構成するCSI300指数<.CSI300>は年初来の上昇率が約16%とS&P総合500種指数と肩を並べる。香港のハンセン指数の上昇率は約30%で、このままの流れが続けば年間で2017年以来最大となる。

中国株式市場は刺激策を契機とする昨年の熱狂とは程遠く、相場は次第に不安定になりつつある。とりわけ、中国不動産開発大手の万科企業が圧力にさらされ、市場参加者の間で住宅市場の長期低迷がまだ終わっていないとの認識が広がっていることが響いている。

ところが投資家やアナリストの間にパニックはほとんど見られず、強気相場が一服しているだけだと受け止められている。

モルガン・スタンレーの中国株チーフストラテジスト、ローラ・ワン氏は「中国に戻ってくる外国人投資家が段階的に資産を再配分するプロセスが今始まったところだと考えている」と話す。「年初からこれまでに、市場関係者が考え方を徐々に前向きに変えるのに十分な材料があった」と述べ、米中関係の緊張について投資家と話す時間は減っていると付け加えた。

中国株は、米中貿易摩擦の逆風にさらされながらも、政府のてこ入れ策、企業統治の改善、そして中国新興企業DeepSeek(ディープシーク)のチャットボット公開を受けた人工知能(AI)関連銘柄の大幅上昇もけん引役となってきた。

中国本土市場から香港市場への資金流入は1兆3800億香港ドル(1770億米ドル)と過去最高に上り、資本市場は活性化した。

深セン融智投資のファンドマネジャー、Xia Fengguang氏は「強気相場は次の段階ではおそらく、基礎的諸条件の改善と利益の伸びがけん引役になるだろう」と予想。他の投資家同様、中国政府が進める産業の過剰生産能力と価格競争に対する取り組みーいわゆる「反内巻運動」―によって企業の利益率は改善すると見込んでいる。

<反内巻>

ファンドマネジャーらは中国の工業株のバリュエーションも魅力的で、この点が投資を呼び込む一助になっていると指摘している。

ファンドマネジャーのワン・アン氏は「景気循環株は比較的割安なので、反内巻政策が徐々に定着していく中、値ごろ感のある水準でポジションを構築し始めることができる」と述べた。

金融データ提供会社データイエスによると、過去3カ月にCSIバッテリーテーマ指数に連動する上場投資信託(ETF)には差し引き135億元(19億1000万ドル)が流入。CSI化学サブ産業指数に連動するファンドには112億元が流入した。一方、ハイテク株比率の高いSTART50指数連動ファンドからは同期間に差し引き311億元が流出した。

上海に拠点を置くYuanzi Investment Managementのファンドマネジャー、シ・ジエ氏は太陽エネルギー、製鉄、石炭株を買っている。「中国の緩やかな強気相場が来年まで続くのは間違いない」と見ており、外国人投資家と国内預金者からの資金流入の可能性を理由に挙げた。

現在、上海総合指数と香港のハンセン指数の構成銘柄の株価収益率(PER)はいずれもおよそ12倍。LSEGによると、これに対してS&P500は28倍、日経平均株価は21倍、欧州FTSE100種指数は21倍で取引されている。

シャンハイ・インテワイズ・キャピタルの販売マネジャー、ワン・ウェンディ氏は「バリュエーションを見ても流動性を見ても、強気相場はまだ中間地点に到達したばかりだ」と強気の姿勢だ。同社は製鉄、化学、宅配の株式を追加で取得しているという。

<ニューチャイナ>

外国人投資家はこれまで、中国の政策リスクに懸念を抱き、この数年米国や他の海外市場が好調に推移する中、中国株への資金配分を比較的軽くしてきた。一部の投資家は中国株に全面的に入れ込んでいるわけではなく、製造業関連指数が悪化を続けており逆風が吹いていると考えている。

DWSのグローバル最高投資責任者(CIO)、ヴィンチェンツォ・ヴェッダ氏は「中国について言えば、われわれはまだ判断を保留している状態だ」と述べた。

中国人民銀行(中央銀行)の最新のデータによると、9月末時点の外国人の中国株保有額は3兆5000億元に増加した。21年のピークである3兆9000億元には遠く及ばないが、一定の底堅さが示された形だ。

欧州資産運用大手アムンディのアジア投資責任者フロリアン・ネト氏は中国株に対して中立的な立場だが、輸出や不動産開発など経済の逆風に直面している「オールドチャイナ」セクターと、AIやバイオテクノロジーなど利益の伸びが期待できる「ニューチャイナ」セクターを切り分けて考えている。「実際、市場は主にニューチャイナ、つまり技術革新、ハイテク、革新的医薬品によって動かされている。われわれはさらに投資比率を高めることを非常に前向きに検討している」という。その上で、投資家が今年の年間リターンを目にすれば、来年は買い手に転じる可能性があると指摘。米マン・グループのチーフ・マーケット・ストラテジスト、クリスティナ・フーパー氏も、25年は多くの株式市場が米市場よりも良好なパフォーマンスを示したとし、特に米国株のバリュエーションが非常に割高になっている中、多くの投資家がそれを認識し米国以外の市場に投資機会を求めるパラダイムシフトが起きると予想した。

ロイター
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