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焦点:米航空会社、感謝祭目前で政府閉鎖の影響に苦慮

2025年11月12日(水)18時14分

米バージニア州にあるロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港で11日撮影。REUTERS/Annabelle Gordon

Rajesh Kumar Singh

[シカゴ 11日 ロイター] - 過去最長となった米連邦政府機関の閉鎖は、旅客機数万便の運航を混乱させただけでなく、年末の休暇期間と重なる第4・四半期に向けての米航空会社の楽観的な見通しを打ち砕いた。政府機関は再開する見通しが立ちつつあるが、航空会社は利用客と自社の収益への悪影響をどう最小限に抑えるか模索している。

航空会社は2025年前半に景気懸念や貿易摩擦により法人とレジャーの予約件数が落ち込んだ後だけに、この第4・四半期は堅調な需要を期待していた。しかし、航空分析会社シリウムによると、感謝祭休暇に向けた予約件数の伸び率は、政府閉鎖が長引く状況で旅行者に広がった不安を反映し、10月末から約1%と半減した。

米上院は10日、連邦政府機関への予算拠出を再開する法案を可決し、政府閉鎖が今週中に終わる見通しが高まった。共和党が多数派を占める下院は近日中に法案を審議する予定だ。

航空業界関係者は政府機関が再開しても運航の混乱が続きそうだと警告している。航空便追跡サイトのフライトアウェアによると、航空便の運航状況は政府閉鎖初期は影響が比較的軽微で、10月1日から11月5日までの欠航便数は4000便を少し上回る程度だった。しかし、欠航便数は直近4日間で8000便強に急増。連邦航空局(FAA)は40の主要空港で段階的な運航削減を義務付けた。

広範かつ予測不能な運航混乱によって、パイロットや客室乗務員は予定された乗務を完了しないうちに勤務時間が法定上限に達している。機材繰りの問題は、乗務員が思わぬ空港に取り残されている状況も重なって、航空会社はさらなる遅延を避けるために代替要員を急いで確保する必要に迫られている。

ロイターが確認した社内メッセージによると、デルタ航空やユナイテッド航空などの航空会社は、特定拠点で乗務員に追加便に乗務するよう奨励している。ユナイテッド航空の広報担当者はパイロットに対する特別手当てを今週拡大し、一部拠点の客室乗務員にも同様に手当てを支給していると認めた。

航空会社は緊急時に対応するため待機要員として確保している予備乗務員も投入している。この予備乗務員を使い果たしてしまえば、11月27日から始まる繁忙期の感謝祭の休暇期間中に深刻な混乱が起きる恐れがあるという。

「われわれの今日の対応次第で今月の残りの日々の状況が決まる」と、ジェットブルーの運航・空港担当上級副社長スティーブ・オルソン氏は語った。

<業界に対する影響>

エアラインズ・リポーティングによると、11月末までの期間中に米旅行代理店経由で販売された航空券は前年同月比10%減となった。

「業界の誰もが第4・四半期の状況を少し心配している」と、アメリカン航空の最高戦略責任者スティーブ・ジョンソン氏はロイターに語った。

アメリカン航空は10月、政府閉鎖に伴う収益損失を1日当たり100万ドル未満と見積もり、デルタの見積もりと似ていた。しかしながら、その後は混乱が拡大している。

運航便数の削減は旅行需要が低い時期に発生しているが、シーポート・リサーチ・パートナーズのアナリストのダニエル・マッケンジー氏の試算によると、航空業界はFAAが義務付けた10%の便数削減のために1日当たり約1000万ドルの損失が生じるという。便数削減が感謝祭まで続けば、損失は延期された旅行や直前予約の減少による収益減を除いても1日4500万ドルに膨らむ可能性がある。

フロンティア航空やアレジアント航空のような格安航空会社は運航便数が少なく乗客を別便に振り替える余地が限られるため、便数削減による収益リスクがより大きい。特定の路線で便数が比較的多いアメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空は格安航空会社が取り逃がした需要から恩恵を受ける可能性があるだろうとマッケンジー氏は述べた。

FAAは予算の執行が回復し運航管制システムに対する過剰な負荷の懸念がなくなれば通常運航に戻る見通しだが、その時期は不透明なままだ。

ロイター
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