ニュース速報
ワールド

援助トラックがガザ入り、ラファ開放準備も再開 遺体返還問題が火種

2025年10月16日(木)06時16分

パレスチナ自治区ガザでは15日、救援物資のトラックが到着する一方、イスラエルはガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所の開放準備を再開した。写真はガザ南部ハンユニスで14日撮影(2025年 ロイター/Ramadan Abed)

Steven Scheer Nidal al-Mughrabi Bhargav Acharya

[エルサレム/カイロ 15日 ロイター] - パレスチナ自治区ガザでは15日、救援物資のトラックが到着する一方、イスラエルはガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所の開放準備を再開した。同検問所は人道支援物資の主要な通過拠点となっている。

イスラエルの治安当局者はラファをガザ地区の住民に開放する準備が進行中であると述べ、別の当局者は600台の救援トラックが入る予定だと述べた。

イスラエルは、ハマスによる遺体の返還に時間がかかりすぎるとしてラファを閉鎖し、援助物資を削減すると警告していた。

ハマスは13日に遺体4体を返還し、14日遅くにさらに4体の遺体を返還した。さらに15日午後10時(グリニッジ標準時19時)にも遺体2体を引き渡すと発表した。しかしイスラエル軍は15日、前日にイスラム組織ハマスから引き渡された人質4人の遺体のうち1体はハマスが拘束していた人質の誰とも一致しないと述べた。

人質の遺体返還問題は、まだ解決されていない他の主要問題とともにパレスチナのイスラム組織ハマスとの停戦協定を破綻させる恐れをはらんでいる。

トランプ米大統領は15日、ハマスがガザでの停戦合意を履行しなければ、イスラエル軍によるガザでの戦闘再開を認めることを検討すると述べた。

ガザ地区には人質の遺体21体が依然として残されているが、紛争による破壊のため、発見・回収が困難な可能性もある。

ハマスの武装勢力は声明で「われわれは合意事項を順守し、生存する人質全員と、回収できた遺体を引き渡した。残りの遺体の発見と回収には多大な労力と特別な機材が必要であり、われわれはその達成のために多大な努力を払っている」と述べた。

<支援物資の搬入>

一方、ロイターの映像では、15日早朝にエジプト側の国境からラファ検問所へ向かうトラックが映っていた。燃料や援助物資を積んだトラックも含まれている。

しかしこの車列が、15日にガザ地区に入る予定だった600台のトラック(停戦計画で定められた1日あたりの台数)の一部としてガザ地区への通過を完了するかどうかは不明だ。支援トラックは他の検問所からガザ地区に入っている。

ラファ検問所には欧州連合(EU)の部隊が派遣され、16日に一般人の通行が可能になる予定だと、2人の情報筋が明らかにした。人の移動に制限が課されるかどうかは、現時点では不明。

イスラエルの治安当局者は「人道支援物資はイスラエルの治安検査後、ケレム・シャローム検問所やその他の検問所を通じてガザ地区に引き続き流入している」と述べた。

国連の緊急援助調整官トム・フレッチャー氏はロイターに対し、ガザに入ることが承認された600台のトラックは「良い基盤」だが、現地のニーズを満たすには不十分だとした。

<ガザでの暴力>

ガザ地区に駐留していたイスラエル軍は、停戦合意で主要部のすぐ外側に引かれたイエローラインまで撤退した。

イスラエル軍が部分撤退したことを受け、ハマスがガザ市街地の一部を急速に奪還。他勢力との抗争のほか、イスラエルと協力したとされる複数の人物を処刑するなどの暴力行為が発生している。ハマスは犯罪と治安上の懸念を行動の理由として挙げている。

米軍中東司令部はハマスに対し、「罪のないパレスチナ民間人に対する暴力と発砲を中止」し、「遅滞なく」武装解除するよう求めた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中