ニュース速報
ワールド

米高官、中国レアアース規制を批判 信頼できない供給国なら分断も

2025年10月16日(木)02時43分

ベセント米財務長官は15日、トランプ大統領には中国の習近平国家主席と会談する準備ができており、両国の当局者は会談の設定に向けて作業を進めていると明らかにした。写真は2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 15日 ロイター] - 米政府高官は15日、中国によるレアアース(希土類)の輸出管理強化について、世界のサプライチェーンへの「脅威」と非難しつつも、中国が政策を転換し、米国による対抗措置を回避することは可能という認識を示した。

中国商務省は9日、レアアース関連の加工技術への規制を拡大し、無許可で海外企業と協力することを禁止すると発表。また海外の防衛・半導体関連企業への輸出を制限する方針を明確にした。 トランプ大統領はその後、11月1日付で中国からの輸入品に100%の追加関税を課すと表明するなど、全面的な貿易戦争に再突入する兆候が強まった。

グリア米通商代表部(USTR)代表は、中国のレアアース輸出規制強化は世界的なサプライチェーン「掌握」で、米国と同盟国はこうした行動を受け入れないと言明した。

同時に、中国は実施には踏み切っておらず、今後撤回される可能性もあるとし、「かなり現実的な状況だが、中国は実行には移さず、われわれが合意している関税とレアアース供給を維持するという1週間前の状況に戻るだろう」という見通しを示した。

ベセント財務長官は、14日夜時点で、トランプ大統領が今月下旬に韓国で中国の習近平国家主席と会談する用意を整えていると明らかにし、両国の当局者は会談の準備のために毎日連絡を取っていると語った。

米中貿易戦争がエスカレートしていないのは、トランプ大統領と習氏の信頼関係によるものという認識も示した。

ベセント長官はさらに、米国は中国との対立激化もデカップリング(分断)を望んでいないとしつつも、中国が信頼できない供給国であることが判明すれば、行動を起こさざるを得なくなるだろうと述べた。

「中国の行動は(ウクライナでの)ロシアの戦争をあおっているだけでなく、レアアースなどに関し、中国への依存リスクを改めて示した」と指摘。「中国が世界にとって信頼できないパートナーでありたいのであれば、世界はデカップリングしなければならないだろう」と述べた。

欧州の同盟国が参加の意向を示せば、米国はロシア産原油の購入を巡り中国に対し関税を課す用意があるとした。「ロシアの軍事力に燃料を供給しているのは、中国によるロシア産石油の購入だ。中国はロシアのエネルギーの60%を購入している。イランのエネルギーの90%もだ」と指摘した。

中国のレアアース輸出規制が中国貿易交渉チーム内の政治的分裂を反映しているかどうかは不明とした。

さらに、中国が先週、米国が導入を予定する入港手数料への対抗措置として、米企業・個人が所有・運航する船舶、米国で建造された船舶、米国籍船に対し、追加の港湾使用料を課すと発表したことについては、ある中国当局者が「招かれざる客」としてワシントンに現れ、「入港手数料が施行されれば、中国は世界的な混乱を引き起こすだろう」と述べていたと明らかにしつつも、「中国が混乱の元凶になることを望んでいるとは思えない」と述べた。

その上で「米国が取れる実質的な行動はあるが、そうしたくない。中国は協議に応じる姿勢を示していると確信しており、事態の沈静化を楽観視する」とした。

ベセント長官はまた、次期米連邦準備理事会(FRB)議長の選考について、11月末の感謝祭後に候補者3、4人をトランプ氏に提示し、トランプ氏との面接を実施する計画とした。

利下げへの意欲が議長候補選びの基準になるかという質問に対しては、「オープンマインドであること」が基準の一つだと応じた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中