ニュース速報

ワールド

チュニジア大統領が首相を解任、新首相と行政権行使へ

2021年07月26日(月)19時08分

 7月25日、チュニジアのサイード大統領(写真)が25日、メシシ首相を解任し、議会を閉鎖した。新たな首相とともに、大統領自ら行政権を引き継ぐ考えを表明した。チュニスで2019年10月撮影(2021年 ロイター/Zoubeir Souissi)

[チュニス 26日 ロイター] - チュニジアのサイード大統領が25日、メシシ首相を解任し、議会を閉鎖した。新たな首相とともに、大統領自ら行政権を引き継ぐ考えを表明した。

2011年の「アラブの春」で民主化を実現したチュニジアが、大統領と首相、議会の権限を分けた2014年の新憲法制定以来、最大の政治危機に直面している。

大統領は議会を30日間、閉鎖すると発表。いつ新首相が指名されるのかは明らかにしていない。

大統領の発表を受け、首都チュニスには新型コロナウイルス対策の外出禁止令の発令中にもかかわらず、多くの支持者が集まったが、大統領の行動への支持がどこまで広がるかは不透明だ。

大統領は声明で、今回の行動は憲法80条に則ったものだと説明した。また、暴力的な反応には武力で応じると警告した。憲法80条に基づき、議員の免責特権も停止するとした。

「国民の多くは偽善や背信、人々の権利侵害に裏切られてきた」と訴えた。サイード氏は無所属で、どの政党の後ろ盾も得ていない。目撃者によると、同氏の声明の数時間後に議会議事堂は軍の車両に囲まれた。また、現地メディアによると、国営テレビの建物も軍部隊に包囲された。

一方、議会の第1党であるイスラム政党・アンナハダ出身のガンヌーシ議長はロイターの電話取材に対し、大統領が「改革と憲法に対するクーデターを起こした」と主張。「われわれは政府がまだ存続しているとみなし、アンナハダの支持者と国民は改革を守る」と述べ、大統領側との対決姿勢をあらわにした。

ガンヌーシ氏は国民に対し、クーデターを止めるためにデモの実施を呼び掛けた。また、議会を招集すると表明した。別の政党の党首とモンセフ・マルズーキ元大統領もサイード氏はクーデターを起こしたと非難した。

25日にはソーシャルメディアでの活動家の呼び掛けでデモが行われたが、どの主要政党も支持を示さなかった。人々の怒りはおおむね、アンナハダに向けられた。チュニスにあるアンナハダの本部を襲撃したデモ参加者を排除するため、警察は催涙ガスを使用した。

国民の間には、長年にわたる汚職や行政機能の悪化、失業の増加を受けて政治への不満がたまっていた。さらにコロナ禍が、経済に追い打ちをかけた。

同国が経済・財政危機に直面し、コロナ対策にも追われる中、サイード大統領とメシシ首相は、ここ1年ほど対立していた。

26日午前、議会前では双方の支持者が互いに石を投げ合っている。ガンヌーシ氏も議会前に到着したが、軍の警備で議会内に入れなかった。

サイード大統領の発表後、チュニスなどの都市では多数の支持者が数時間にわたって街頭に繰り出し、花火を打ち上げる姿も見られた。

チュニジアの外貨建て債券は急落している。

憲法の規定では、大統領は外交と国防にのみ直接の権限を持つが、サイード大統領は先週の政府のコロナワクチン接種体制の不備を巡り、軍がコロナ対応の指揮を執るよう指示していた。

憲法を巡る争いは本来、憲法裁判所で解決を図ることになっている。だが、判事任命で紛糾したため、憲法制定から7年が経った現在も、憲法裁は設置されていない。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中