ニュース速報

ワールド

NATO、中国を安保リスクと認識 軍事的野心に対抗=共同声明

2021年06月15日(火)11時44分

6月14日、北大西洋条約機構(NATO)はブリュッセルの本部で首脳会議を開き、中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと認識し、同国の軍事的野心に対抗する姿勢を示す共同声明を採択した。写真は同日、NATO本部で記者会見するストルテンベルグNATO事務総長(2021年 ロイター/Olivier Hoslet)

[ブリュッセル 14日 ロイター] - 北大西洋条約機構(NATO)は14日、ブリュッセルの本部で首脳会議を開き、中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと認識し、同国の軍事的野心に対抗する姿勢を示す共同声明を採択した。

共同声明は「中国が示している野心的で強引な振る舞いは、規則に基づく国際秩序、および安全保障に対するシステミックな挑戦になっている」と表明。中国の覇権主義と軍事拡大に対抗するようNATO首脳に呼び掛けたバイデン米大統領の外交的な勝利となった。

バイデン大統領は、加盟国が攻撃を受けた場合に他の加盟国が反撃する集団的​自衛権の行使を定めるNATO条約第5条について、米国にとり「神聖な義務」と表明。「欧州は米国がここにいることを知っておいてほしい」と述べ、NATO脱退をちらつかせたトランプ前大統領とは一線を画した。

その上で、ロシアと中国を民主主義に組み入れようとする1990年代半ば以降の西側諸国の取り組みに言及し、両国は「われわれが望んだように」行動していないと語った。

バイデン氏はその後、記者会見で、NATO条約第5条が定めている通り、米国のNATO加盟国に対するコミットメントは「揺るぎない」とし、「米国は戻ってきた」と述べた。

また、中国とロシアはNATOを分断させようとしているとし、米国はロシアとの対立は望んでいないとしながらも、ロシアが「有害な活動を継続」した場合、NATOとして対応すると表明。16日にスイスで行われるロシアのプーチン大統領との会談で、この点について伝えると語った。

ドイツのメルケル首相は、米大統領にバイデン氏が就任したことで新たなページが開かれた指摘。その上で、「サイバー空間における脅威のほか、ロシアとの結託などを踏まえると、中国を看過するわけにはいかない」とし、中国を潜在的な脅威として見なすことが重要になると述べた。ただ「過度に評価してはならない。適切なバランスを見出す必要がある」と語った。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、バルト海からアフリカに至る地域で中国が軍事的な存在感を拡大させていることは、核抑止力を持つNATOが準備を整えておく必要があることを示しているとし、「中国はわれわれに迫っている。サイバー空間のほか、アフリカでも存在感を増大させているが、これに加え、われわれの重大なインフラに対しても大規模な投資を実施している」とし、「われわれは同盟として、こうした事態に共に対応しなくてはならない」と述べた。

また、今回の首脳会議で加盟国がNATO共通予算への拠出を増加させることで合意したことも明らかにした。

NATO首脳はロシアについて、ウクライナとの国境沿いに展開する軍部隊の増強のほか、サイバー攻撃などを巡る懸念を表明。リトアニアのナウセーダ大統領は、ロシアはベラルーシを「呑み込もうとしている」とし、NATOはロシア抑止に向け団結する必要があると指摘。バルト3国はロシア抑止に向け、米駐留軍の増加を呼び掛けると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中