ニュース速報

ワールド

アングル:インド、ミャンマー政変に慎重姿勢 「中国接近」を懸念

2021年03月04日(木)15時41分

  インドが隣国ミャンマーでの軍事クーデターに慎重な対応を取っている。写真中央はモディ首相、ニューデリー、1月撮影(2021年 ロイター/Adnan Abidi)

[ニューデリー 3日 ロイター] - インドが隣国ミャンマーでの軍事クーデターに慎重な対応を取っている。インドが関与するミャンマー国内の総額6億5000万ドルの野心的事業の先行きを心配しているほか、ミャンマー国軍幹部を公然と非難すれば競合する中国に接近する結果を招くと懸念しているからだ。

インド政府の立場に詳しい2人の関係筋は、政府はミャンマーの民主主義の回復を望んでおり、クーデターを起こした国軍とも非公式で協議を行っていると述べた。同時に、国軍への影響力には限界があることも理解し、公然と非難するのは避けたい考えだという。

関係筋のうち1人は「国軍に、これまで起きたことは間違っていると認識させたいとの考えを非常に明確にしている」と述べた。

ミャンマーの警察が2月28日にデモ隊に発砲し、18人以上が死亡したのを受け、インド大使館はツイッターに「全当事者が自制し、平和的な対話で問題を解決するよう求める」と投稿した。

インドのティルムルティ国連常任代表は先に「民主主義的な秩序の回復はミャンマーの全当事者の優先事項であるべきだ」と述べていた。

ただ、ミャンマーを逃れ、インドで難民として暮らす少数民族チン族は3日にニューデリーでデモを繰り広げ、インド政府にミャンマー国軍に対してより強硬な行動を取るよう求めた。

<経済と防衛のつながり>

インド当局はかねてから、中国の南アジアでの政治・経済的影響力の高まりを懸念していた。ミャンマー国軍に背を向ければ、中国がさらに影響力を強めるのを許すかもしれない。

インドはこれまでミャンマーに17億5000万ドルの開発支援を行っており、現在も同国西部での約4億ドル規模の港湾および高速道路建設事業に関与している。インド内陸の複数の州をミャンマー経由でタイと結ぶ道路建設事業にも約2億5000万ドル投じている。

関係筋は「クーデターで接続性が弱まるのが最大の懸念だ」と述べた。

インド北東の国境地帯の警備でミャンマー兵士の協力に依存していることも、国軍に強硬な態度を取れない理由の1つだ。同国境地帯の反政府グループの一部は中国の支援を受けていると考えられている。

インドのマノジ・ムクンド・ナラベーン陸軍参謀本部長は先月、ミャンマー軍は過去2年にわたり、インドの要請で国境沿いで反政府勢力を排除する作戦を行ってきたと述べた。インド軍の施設では多数のミャンマー兵士の訓練が行われており、インドは昨年、ミャンマー国軍に潜水艦を贈与している。

(Devjyot Ghoshal記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責

ビジネス

訂正-メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中