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バイデン氏、国防予算削減に苦慮へ 雇用への影響大きく 

2020年11月26日(木)10時08分

11月25日、米大統領選で勝利を確実にした民主党候補のバイデン前副大統領(写真)は、来年1月の大統領就任後、党内の進歩派から国防予算の削減を求める強い圧力に直面する見通しだ。デラウェア州ウィルミントンで撮影(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

[ワシントン 25日 ロイター] - 米大統領選で勝利を確実にした民主党候補のバイデン前副大統領は、来年1月の大統領就任後、党内の進歩派から国防予算の削減を求める強い圧力に直面する見通しだ。

しかし、国防予算は新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリセッション(景気後退)局面で、数多くの雇用を支えていることから削減される可能性は低いとみられる。

トランプ政権は、過去3年間に国防支出を6195億ドルから7400億ドルへと19%拡大した。

米下院の進歩派民主党議員らは、新型コロナ危機に対応するため、軍事支出の削減を求めている。

米民間シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の国防予算分析責任者、トッド・ハリソン氏は「民主党が新議会で上院を制したとしても、国防費を直ちに削ることは望まないだろう。われわれはまだリセッションに陥っているか、それを緩やかに脱しつつある状況だとみられるからだ」と指摘した。

国防費を急に削減すれば、失業の長期化で中間選挙にまで影響が出る恐れがあり、下院でかろうじて多数派を維持する民主党にとり、打撃となる可能性があるという。

このことから民主党穏健派の多くも、国防予算の大幅削減を支持しないとみられると、国防総省の元当局者は指摘する。

専門家によると、防衛関連の雇用は1人につき間接的に3─4人の雇用を新たに生み出すことから、政治家が何としても守りたい類の雇用となっているという。

防衛産業も、早期の予算削減を見込んでいない。米防衛機器メーカー、レイセオン・テクノロジーズのトビー・オブライエン最高財務責任者(CFO)は最近の決算発表後に「下向きの調整があるとすれば、2022年ごろだろう」と述べている。

議会予算局(CBO)は9月、国防総省の予算見通しは2025年までほぼ横ばいで推移すると分析した。

防衛産業と次期国防長官候補らの関係の深さも、大幅な予算削減がない可能性を示唆している。

国防総省の元高官ミシェル・フロノイ氏は、米政権中枢部で防衛関連の事業者と連携してきた経歴を持つ。

また、もう1人の候補であるジェイ・ジョンソン元国土安全保障長官は、軍事用航空機メーカー大手、ロッキード・マーチンの取締役会メンバーだ。

仮に国防予算の削減が承認された場合、まず陸軍兵士の削減や海軍が展開する空母打撃群の削減が行われるとみられる。

関係筋によると、バイデン次期政権に影響を与えるとみられる議会関係者や元国防総省当局者らを含む超党派グループが、10月半ばに実施された戦略予算評価センター(CSBA)/ロナルド・レーガン・インスティチュートのエクササイズで、これらの削減を想定したという。

ロイター
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