ニュース速報

ワールド

日本の防衛費、過去最大5兆4900億円を要求 長射程の攻撃力を強化

2020年09月30日(水)16時24分

 9月30日 防衛省は2021年度予算の概算要求について、過去最大の5兆4897億円を計上することを決定した。写真は強襲揚陸艦に垂直着陸する米海兵隊のF35B。日本の防衛省は来年度、2機を取得したい考え。2018年3月、沖縄県沖で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 30日 ロイター] - 防衛省は30日、2021年度予算の概算要求について、過去最大の5兆4897億円を計上することを決定した。専守防衛を掲げる日本は他国の領土に届く長距離ミサイルなどを保有してこなかったが、中国をはじめ周辺国が武器の長射程化を進める中、敵の脅威を受けない遠方から攻撃可能な装備を揃える。

要求額は前年度の当初予算に比べ3.3%増。年末の財務省との折衝で認められれば9年連続で増加し、7年連続で過去最大を更新する。

日本はレーダーに捕捉されにくいF35戦闘機を米国から計105機調達する方針を決めており、来年度は6機分の購入費666億円を要求する。うち2機は短距離滑走による離陸と垂直着陸が可能なBタイプ。甲板の広いいずも型護衛艦を改修し、空母艦載機として運用する。

F35のステルス性を損なわないよう、胴体内に格納するノルウェー製の巡行ミサイルの取得費172億円も計上する。射程距離は500キロ。敵の攻撃を受けにくい場所から海上や地上の目標を狙うことが可能で、「スタンド・オフ・ミサイル」と呼ばれる。

900キロとさらに射程の長いのミサイルを搭載できるよう、F15戦闘機の改修費213億円も要求する。また、発射したミサイルが迎撃されないよう、遠方から敵のレーダーを無力化できる電子戦機を開発する。153億円を要求する。

安価な小型衛星を多数使い、攻撃目標の位置を捉えるための情報収集能力を強化することも研究する。

中国や北朝鮮が軍事力を増強する中、日本政府は抑止力を高めるためとして、敵基地攻撃能力の保有の是非を検討し、年末までに結論を出すことにしている。巡航ミサイルなどの打撃力、レーダーを無力化する電子戦能力、攻撃目標を正確に捕捉する情報集力が欠かせないが、予算要求が認められれば、必要な装備の本格的な整備が進む。

「小型衛星群も導入できれば、より高度なストライク・パッケージ(敵基地攻撃の装備体系)が揃う」と、政府関係者は話す。

このほか、国産開発を目指す支援戦闘機F2の後継機は、開発費と関連研究費で772億円を要求する。調達から維持費も含めた総コストは4兆円以上とされ、2030年代の就役を計画する。

配備停止を決めた陸上配備型迎撃ミサイル「イージス・アショア」の代替措置については、金額を明示しない事項要求として盛り込む。

(久保信博 )

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中