ニュース速報

ワールド

アルメニアとアゼルの戦闘激化、相互に砲撃 和平協議拒否

2020年09月30日(水)09時05分

旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘は29日も激化の一途をたどり、双方が互いの領土内に砲撃を加える事態となった。写真は砲撃を行うアルメニア軍兵士。29日撮影(2020年 ロイター/ARMENIAN MINISTRY OF DEFENCE)

[バクー/エレバン  29日 ロイター] - 旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘は29日も激化の一途をたどり、双方が互いの領土内に砲撃を加える事態となった。民族紛争が全面戦争に発展する恐れが高まる中、米ロなどが自制を呼び掛けている。

ただ、両国は和平協議を拒否。アゼルバイジャンのアリエフ大統領はロシアの国営テレビに対し、協議の可能性を一蹴。アルメニアのパシニャン首相も同テレビに対し、戦闘が続く間は協議できないと述べた。

輸出用の石油や天然ガスの輸送パイプラインが通る南カフカス地域の安定が損なわれれば、資源価格に影響が出るとの懸念も高まっている。

国連の安全保障理事会は29日に開いた非公式会合で、激化する戦闘に強い懸念を表明し、武力行使を非難。国連のグテレス事務総長による紛争の即時停止要請を支持する考えを示した。

この日はアルメニアが、自国軍機がトルコのF16戦闘機によりアルメニア領空内で撃墜されたと発表。緊張が一段と高まった。

アルメニアはパイロットが死亡したとしているが、撃墜の証拠は示していない。トルコはアルメニアの主張は「完全に正しくない」として撃墜を否定。アゼルバイジャンも関与を否定している。

ナゴルノカラバフ地域を巡る対立が一段と先鋭化すれば、トルコだけでなく、ロシアも巻き込んだ地域紛争に発展する恐れがある。

ロシアはアルメニアと軍事協定を結んでいるが、同時にアゼルバイジャンとも近い関係を維持。ロシア大統領府によると、プーチン大統領はアルメニアのパシニャン首相と紛争激化後2回目となる電話会談を実施。関与する全ての国・地域に対し事態の沈静化を呼び掛けた。ロシア大統領府は、プーチン氏がアゼルバイジャンのアリエフ大統領と接触したかについては公式に明らかにしていない。

アゼルバイジャン当局によると、戦闘でこれまでに民間人12人が死亡、35人が負傷した。兵士の死亡者数、負傷者数については明らかにしていない。ナゴルノカラバフ当局によると、少なくとも兵士84人が死亡した。

アルメニア当局によると、紛争地のナゴルノカラバフから約20キロ離れたバルデニスで、アゼルバイジャンによる攻撃で民間人1人が死亡した。アゼルバイジャン防衛省は、アルメニア軍がバルデニスからアゼルバイジャンのダシュケサン地域に攻撃を加えていた主張。アルメニアはこれを否定している。

米大統領選挙の民主党候補、バイデン前副大統領は「ナゴルノカラバフを巡る紛争で死者数が急増する中、トランプ政権はアゼルバイジャンとアルメニアに対し事態の沈静化を呼び掛ける必要がある同時に、トルコなどに干渉しないよう要請する必要がある」とツイッターに投稿した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン首相が辞任の可能性示唆、妻の汚職疑惑巡り裁

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中