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米国の核廃棄条約破棄、軍拡競争で米中間の緊張激化も

2018年10月24日(水)15時52分

 10月23日、米政府はロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄することで中国のミサイル開発の脅威に対抗する新たな道筋を見いだすことになるかもしれない。ただ、専門家らは、軍拡競争に発展すればアジア太平洋地域の緊張が急激に高まることになると警鐘を鳴らしている。写真は米国旗を掲げる米兵。カブールで2016年9月撮影(2018年 ロイター/Omar Sobhani)

[ワシントン 23日 ロイター] - 米政府はロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄することで中国のミサイル開発の脅威に対抗する新たな道筋を見いだすことになるかもしれない。ただ、専門家らは、軍拡競争に発展すればアジア太平洋地域の緊張が急激に高まることになると警鐘を鳴らしている。

米国の当局者らは長年にわたり、INF廃棄条約が制約となり、中国による最新式の地上発射型ミサイル開発に匹敵する戦力増強ができない状況に危機感を示してきた。同条約は米国とロシアに中・短距離の核および通常型ミサイルの全廃を義務付ける内容となっている。

トランプ大統領は21日に「ロシアも中国もミサイル開発を行っているのに米国だけ条約に縛られるのは受け入れられない」と述べ、条約を破棄する根拠としてロシアの条約違反だけでなく、条約の枠外にいる中国による脅威を挙げており、中国に対抗するために国防総省にさらなる裁量を与える可能性を示唆している。

米国防総省の元当局者であるアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンタル氏は、INF廃棄条約破棄によって米国は、グアムや日本に陸上移動式の(核弾頭を搭載していない)通常型ミサイルを配備する可能性があると指摘。そうなれば、中国はミサイル防衛の強化を余儀なくされ、軍拡競争に発展する恐れがあるとした。

「現在の状況を根本から変えるだろう」と警告した。

<脅威の拡大>

米国はこれまで、中国のミサイル開発に対抗するため、米軍の艦船や戦闘機から発射可能なミサイルの拡充などに力を入れてきた。ただ、中国の地上発射型ミサイルの配備には米国も地上型ミサイルで応じることが最大の抑止力になるとの意見もある。

オバマ前政権下で国防次官補代行を務めたケリー・マグサメン氏は、トランプ政権発足のだいぶ前から、米当局者らは中国がINF廃棄条約の制約を受けていないことに危機感を覚えていたと指摘。

ただ、アジアでのミサイル配備に関する新たな政策を策定するには、同盟国との慎重な調整が必要になるとの見方を示した。INF廃棄条約の破棄を巡り誤った見通しを与えることになれば、アジア太平洋地域の安全保障に混乱を生じさせる恐れがあるとし、「不安定化を招く可能性を秘めている」と警告した。

専門家らは、中国が地域の諸外国に対し、米国のミサイル配備の要請を拒絶するよう圧力をかけることになると予想する。

オバマ前政権時代に国防総省の高官を務めたアブラハム・デンマーク氏は、米ミサイル配備の候補地はグアムや日本で、オーストラリアも含まれる可能性があると述べた。

中国外務省の華春瑩副報道局長は、米国によるINF廃棄条約からの一方的な離脱は悪影響が見込まれるとし、「行動する前に考え直す」よう求めた。また、一方的な離脱に関して中国に言及するのは「完全な誤り」だと強調した。

*見出しを修正しました。

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