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アングル:積み上がる日本の武器調達ローン残高、19年度は5兆円突破
8月31日、防衛装備品の支払いを次年度以降に繰り越して積み上がったローンの残高が、2019年度は前年から4000億円増え、5兆円を超す見通しだ。米国から高額な武器調達を増やしていることなどが影響し、来年度の返済額は年間の防衛費約5兆3000億円の4割を占めることになる。写真はオスプレイ。沖縄で3月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
[東京 31日 ロイター] - 防衛装備品の支払いを次年度以降に繰り越して積み上がったローンの残高が、2019年度は前年から4000億円増え、5兆円を超す見通しだ。米国から高額な武器調達を増やしていることなどが影響し、来年度の返済額は年間の防衛費約5兆3000億円の4割を占めることになる。
今後は宇宙やサイバーといった新領域への対処を強化する必要があるが、予算の大幅増も見込みにくく、新たに振り向ける原資は限られる。防衛省関係者は、19年度から始まる5カ年の新たな中期防衛力整備計画について「あまり大きな増強はできないかもしれない」と話す。
<イージス・アショアは5年ローン>
政府予算は、会計年度ごとの歳入で歳出を賄うのが基本。しかし、航空機や艦艇など完成までに長くかかる防衛装備品の調達は、「後年度負担」として分割後払いが認められている。
防衛省が31日に決定した19年度予算の概算要求額は5兆2926億円(米軍再編費と政府専用機の導入経費を除く)。武器の調達・整備維持費は契約ベースで3兆5512億円に上るが、このうち来年度に実際支払うのは1兆0370億円に過ぎない。残りの2兆5141億円は最長10年間で分割払いする。
たとえば、米国から新たに導入する陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の契約額は2基で2352億円。うち来年度の支払額は57億円で、残りは再来年度以降の4年間で分割返済する。
現在の中期防が始まった2014年度以降、自衛隊は島しょ防衛強化を目的とした装備体系を整備してきた。最新鋭のステルス戦闘機「F35A」、無人偵察機「グローバルホーク」、水陸両用車「AAV7」、新型輸送機「オスプレイ」など、米国製の高額な武器調達が目立つ。
国産哨戒機「P1」を一度に20機購入した年もあった。まとめ買いで調達費を低減するのが目的だったが、ここにきて毎年度のローン返済が重くのしかかっている。
防衛省によると、2014年度に3兆3594億円だったローン残高(米軍再編費と政府専用機の導入経費を除く)は、毎年3000億円から4000億円のペースで増え、18年度には4兆9221億円まで積み上がった。高額なイージス・アショアの返済が加わる19年度は5兆3371億円にまで膨らむ見通しだ。
<防衛費、「最大でも年1.2%増」>
政府は今年末までに防衛大綱を見直すとともに、19年度から始まる5カ年の新たな中期防を策定する。あらゆる装備がネットワークでつながる現代戦では、それを支える人工衛星や通信網の防御が重要になるため、宇宙やサイバーといった新しい分野における防衛力強化を打ち出す。
しかし、19年度予算の要求額のうち、約4割の2兆0647億円は過去に購入した武器の支払いに、同じく4割の2兆1908億円は隊員の人件費や食費に回さなくてはならない。新たな装備の取得には、2割の1兆0370億円しか当てることができない。海上自衛隊は来年度、哨戒機P1の取得要求を断念した。
政府は現在の中期防で、年0.8%ずつ防衛費を増やした。次期大綱・中期防でも増額する方針で、自民党は国内総生産(GDP)比2%を求めている。だが、別の防衛省関係者は「最大でも年1.2%程度の増加だろう」と話す。
小野寺五典防衛相は、31日の会見で「必要な装備をこれからもしっかりとそろえることが重要だ。取得に当たっては節減に努力をしていく」と語った。
(久保信博 編集:田巻一彦)