ニュース速報

ワールド

米企業、新たな対中関税は幅広い製品の値上げにつながると警告

2018年08月21日(火)08時11分

 8月20日、米通商代表部(USTR)が中国からの2000億ドル相当の輸入品を対象とする関税に関する公聴会を開始するのを前に、米企業は、関税導入によってベビー用品から棺おけに至るまで、幅広い製品の値上げを余儀なくされると警告した。写真はカリフォルニア州ロングビーチの港で4月撮影(2018年 ロイター/Bob Riha Jr)

[ワシントン 20日 ロイター] - 米通商代表部(USTR)は20日、2000億ドル相当の中国製品に課す関税について6日間の日程で公聴会の開催を始めた。米企業は、関税導入によってベビー用品から棺おけに至るまで、幅広い製品の値上げを余儀なくされると警告した。

新たな対象品目は中国産の海産物や中国製の家具、照明機器、タイヤ、化学製品、自転車、車のベビーシートなどがあり、これまでの対中関税よりも消費者向け製品が多く含まれている。トランプ政権は最大25%の税率の適用を提案している。

ニュージャージー州の衣服生産・輸入企業オーナーは「ウエディングドレスや、高校卒業記念パーティー用ドレスは米国で作ることができない。だれもやりたがらない」と漏らす。「中国以外の業者を選ぶことができるのなら、全世界が選択するだろう」と語った。

マサチューセッツ州のスポーツ衣料企業幹部は「野球帽の25%値上げに大半の消費者は対応できない。仮に今回の関税引き上げが実行に移されれば、事業が停滞するか衰退に向かう」と話す。

全米商工会議所は公聴会に向けた書面による証言で、新たな関税で「米国の消費者や労働者、企業、そして米経済が受ける損害が劇的に拡大する」と強調した。

その上で、トランプ政権は中国による知的財産権侵害やその他の有害な貿易慣行に対抗するための「首尾一貫した」戦略に欠けていると批判し、中国と「真剣な協議」を行うよう呼び掛けた。

米中の通商協議は週内にワシントンで再開する見通しとなったが、米国の対中関税や中国による対米報復関税に何らかの影響が及ぶかは未知数。

自転車・部品販売各社は、米国内で年間売られる1800万台の94%が、劇的な関税引き上げに直面し、ヘルメットなど安全用品の使用が減ると危機感を募らせる。

ヘルメットなどのメーカー社長は「消費者が自転車用ライトを買わずに交通法規を無視するか、ヘルメットを着用せずに死亡する可能性」を指摘した。

公聴会を前に米企業などからは1400件以上の書面によるコメントがUSTRに寄せられており、大半の企業は関税導入による悪影響やコスト増を指摘。対中関税を称賛、あるいは対象品目の拡大を求める企業は少数にとどまった。

米文房具・日用品ニューウェル・ブランズ傘下のベビー用品メーカー、グレコ・チルドレンズ・プロダクツは、対中関税による商品の値上げを受けて、中古品のベビーシートや遊具を購入する親が増えることになると指摘。また、安全ではないベビーベッドを使ったり、親と同じベッドに子どもを寝かせることになるかもしれないとした上で、同関税は「子どもの安全問題を引き起こすだけで、中国に政策の変更を促すことにはならない」との見解を示した。

テキサス州の棺おけメーカー、センテニアル・キャスケットのダグラス・チェン社長は、同社は中国製棺おけのみを取り扱っているため、関税によって「多大な損失」が発生し、親族を失って悲しみにくれる遺族らが購入する棺おけの値段が上がることになるとコメントした。

フェイスブックやアマゾン・ドット・コム、アルファベットなどで構成するインターネット協会は「(関税は)米ネット各社に過度の経済的損害をもたらす。リストには、ネット企業活動の在り方に影響を及ぼす製品が含まれる」と訴えた。

核燃料製造で米最大手のウエスチングハウス・エレクトリックは、米国内の核燃料工場の設備に使われている「ジルコニウム」は中国産に依存していると説明。米国内で調達できないため、関税が適用されれば、原子力発電所向けの核燃料の製造コストが上がり、最終的に一部の米消費者の電気料金に跳ね返ることになるとの見方を示した。

米最大の自転車ブランド「ハフィー」のビル・スミス最高経営責任者(CEO)は、中国製の自転車を年間400万台販売する同社にとって、関税は「深刻な脅威になる」と強調した。「中国は世界最大の自転車製造国であるため、アジアや欧州でハフィーが必要とする台数を供給できる国は他にない」と記した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中