英首相、ＥＵに北アイルランド国境巡る新提案 壁復活「あり得ず」

　７月２０日、英国のメイ首相は、欧州連合に対し、ＥＵ加盟国であるアイルランドと英領北アイルランドの間の国境管理復活を回避する新たな交渉を要請した。ベルファストで政治家や財界首脳らに向け講演する同首相。代表撮影(２０１８年　ロイター)

［ベルファスト　２０日　ロイター］ - 英国のメイ首相は２０日、欧州連合（ＥＵ）に対し、ＥＵ加盟国であるアイルランドと英領北アイルランドの間の国境管理復活を回避する新たな交渉を要請した。

ベルファストで行った政治家や財界首脳らに向けた講演で、メイ首相はＥＵと北アイルランドの国境問題に焦点を当てた。この問題は、ＥＵ離脱を巡る交渉において主要な障害の１つとなっている。

首相は、ＥＵ離脱に伴う物理的な壁（ハードボーダー）の復活は「ほとんどあり得ない」と述べたが、回避するためのＥＵ案も受け入れられないとして拒否。代わりに、１２日に公表した離脱方針をまとめた白書の内容をＥＵに検討するよう求めた。白書には、産業を保護し国境におけるインフラ設置を回避するため、モノの貿易に関する最も緊密な関係について交渉することが盛り込まれている。

さらに首相は、「今度はＥＵが応答する番だ。既に機能しないことが証明されている対応へと後退しないばかりでなく、ＥＵの姿勢を進化させるべきだ」と主張した。

これに対しＥＵのバルニエ首席交渉官は、北アイルランド国境に関する代替案を受け入れる準備はあるとしたが、離脱協定の一部としての法的に周到な合意になるとの見解を示した。交渉官は来週、協議のため英国側を招く。

メイ首相は今回、問題となっている国境付近を訪問した。北アイランド紛争で１９９８年に結ばれた和平合意に基づき、５００キロにわたる国境では英軍による検問所が撤廃され、境目がどこかは目視しづらくなっている。この紛争では３６００人以上が死亡した。