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焦点:玉虫色の新貿易協議、FTAを回避 舞台裏に工夫も
4月19日、日米両首脳は、貿易問題を協議する閣僚レベルの新たな枠組みを作ることで合意した。写真は安倍首相とトランプ米大統領。米フロリダ州で18日撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)
[東京 19日 ロイター] - 日米両首脳は、貿易問題を協議する閣僚レベルの新たな枠組みを作ることで合意した。米国の志向する2国間の自由貿易協定(FTA)という看板を掲げることを回避しつつ、日本が求める環太平洋連携協定(TPP)の方向性も否定しない「玉虫色」で決着させた。その舞台裏では、米国との合意を導くための日本政府による工夫が施されていた。
合意に至った枠組みの名称は「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議」(仮)。外務、財務、経済産業省が主導して作り上げ、日本側の提案で実現した。2国間や多国間などの表現を入れず、貿易にかかる形容詞を連ねたのが特徴だ。
水面下では、首脳会談前に政府関係者を米国に派遣し、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と事前協議する計画もあった。
しかし、政府内には「米国に考える時間を与えるのは得策ではない」との声もあり、首脳会談当日まで、米側には詳細を伏せる作戦をとった。
一方で、トランプ大統領がたびたび用いる「reciprocal」(相互的な)との文言を枠組みの名称に急きょ入れるなど、米国が合意しやすいよう政府が腐心した跡もみえる。
日本側が新たな枠組みの合意を急いだ背景には、FTAを主張する米国の攻勢が弱まらないことがある。
本来は、麻生太郎副総理とペンス副大統領による「日米経済対話」がクッションの役割を果たすはずだったが、大きな進展がみられず「逆に米国の不満が高まる結果となっている」(経済官庁幹部)との見方がある。
別の窓口を設けることで米国からの批判を和らげたい考えだが、ある政府関係者は「TPPかFTAか、といった結果を得たいわけではない」と解説する。
新たな枠組みの名称は、日本語では「協議」だが、英語では「Talks」。交渉ではなく、あくまで意見交換の場との意味合いを強めた。
結果的に日本側の思惑が結実したかたちだが、新たな枠組みでも米国の要求をかわし切れるかはみえない。
今年11月に行われる米中間選挙が近づくにつれ、FTAを求めるトランプ大統領の対日姿勢が厳しくなることが予想されるからだ。今後、日米の方向性のずれがいっそう表面化する可能性も残されている。
*写真を更新します。
(梅川崇 編集:田巻一彦)