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アングル:北朝鮮の「非核化」、解釈の隔たりが問題を複雑化
3月28日、北朝鮮問題を巡って「非核化」がキーワードになっているが、この言葉の解釈は国ごとに異なり、問題をさらに複雑化している。ソウルで撮影(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[ソウル 28日 ロイター] - 北朝鮮問題を巡って「非核化」がキーワードになっているが、この言葉の解釈は国ごとに異なり、問題をさらに複雑化している。
ここ数週間、金正恩朝鮮労働党委員長は韓国首脳、次いで中国首脳に対し、朝鮮半島の「非核化に尽力する」と述べたと報じられている。しかしこうした発言は目新しくないばかりか、米政府の期待通りの意味である可能性も低い。
北朝鮮は長らく、米国が韓国から軍を引き揚げることなどを条件に、ゆくゆくは核を放棄する姿勢を示してきた。
米国側の要求は、北朝鮮が可及的速やかに核兵器とその製造に必要な施設を、検証可能な形で永久に廃棄することだ。
米科学者連盟のシニアフェローであるアダム・マウント氏は「米朝首脳会談が近づくにつれ、非核化の解釈は収れんするどころかかい離しているようだ」と言う。
<条件付き>
問題の核心は、金委員長が非核化に付けている数多くの前提条件にあるのかもしれない。
中国国営通信、新華社によると、金氏は今週の訪中で「米韓両国が善意でわれわれの努力に応えれば、朝鮮半島の非核化問題は解決できる」と中国高官に伝えた。
また韓国高官によると、金氏は身の安全が十分に保証されるなら核兵器の放棄もやぶさかでないとの姿勢を示した。
「それが北の望む非核化の条件なら、実現の見込みはまったくない」とマサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究プログラムの准教授、ビピン・ナラン氏は言う。
アナリストらによると、北朝鮮は核開発を直ちに放棄するのではなく、開発計画を制限する何らかの措置を申し出る可能性が高い。
<交渉決裂も>
カーネギー精華センター(北京)の北朝鮮専門家、シャオ・トン氏によると、北朝鮮と中国の非核化の定義は近い。「中国は北朝鮮に核兵器の放棄を本気で要求しているのではなく、朝鮮半島の非核化が最終目標であるとの姿勢を確認したがっている」という。
韓国は公式には、完全な核廃棄という目標を米国と共有するとしている。しかし議会筋によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は議会で、完全放棄はすぐには実現不可能かもしれないと認め、「並行して他の措置を」探る姿勢を示した。
アナリストらによると、最も可能性の高い歩み寄りシナリオは、北朝鮮が制裁解除および米韓軍事演習の抑制あるいは凍結と引き換えに、核・ミサイル実験の凍結、ひいては核開発の制限を受け入れるというものだ。
トランプ米大統領自身が相反するメッセージを送っている。北朝鮮に対して軍事行動をちらつかせ、対話は時間の無駄と言いながら、首脳会談の要請を受け入れた。
次期大統領補佐官に決まったボルトン元国連大使は最近、米朝首脳会談でトランプ氏は金氏に対し「ここは時間稼ぎの場ではないと告げ、こちらが望むのは非核化の交渉についての交渉ではなく、非核化そのものだと明示する」べきだと述べた。
トランプ氏がこれに同調し、金氏が譲歩を拒めば、交渉は決裂するとマウント氏は言う。
「トランプ氏が段階的アプローチを拒めば、道理が通じず期待外れと受け止められるだろう。そうなれば他の当事者は米国を外して単独で事を進めるかもしれない」とマウント氏は述べた。
(Josh Smith記者)