インタビュー:26年春闘、昨年より下向きで臨む選択肢はない=自動車総連会長
Kentaro Sugiyama Makiko Yamazaki
[東京 14日 ロイター] - 自動車総連の金子晃浩会長は14日、ロイターとのインタビューで、2026年の春季労使交渉(春闘)に臨むにあたり、昨年の要求を下回ることはないとの考えを示した。米国の関税措置が企業収益を圧迫しているものの、物価高が継続し、実質賃金がマイナス圏で推移する中、「昨年よりも下向きベクトルで臨むという選択肢はない」と語った。
米国の自動車関税は最大27.5%から15%へ引き下げられたとはいえ、従来の2.5%に比べると大きな負担増となり、今期の企業収益は約3割減少するとの見通しもある。金子会長は「それを無視するわけにはいかない」としつつも、それが要求を見送ることにはつながらないと語った。
「我慢し続けてきた過去30年間と同じ轍を踏んではいけない」と指摘。賃上げが消費を拡大し、消費拡大が成長を加速させるという好循環を安定させるには、コンディションが悪化しても賃上げの流れを維持することが重要だとの認識を示した。
自動車総連の25年春闘の最終集計によると、賃金改善分(ベースアップ相当)と定期昇給(定昇)相当分を合わせた賃上げ額は1万2886円となった。1976年以降で最高となったものの、年代別では40代後半から60代にかけて物足りなかったとの認識がある。
金子会長は「執行部の責務として、すべての組織のすべての組合員が実質賃金を上回り、生活水準が改善されることを求めている」と強調。生産性向上やサプライチェーン(供給網)全体で取引適正化へ、組織的に粘り強く働きかけていく考えを示した。
自動車総連は、25年春闘で中小組合を念頭に賃金改善分として月額1万2000円の水準を踏まえて要求を構築する方針を示した。金子会長は「今年はまだ決めていない」としつつ、労組が要求を躊躇しがちになる状況であるため「何かしら数字は出した方がいいんじゃないかと思っている」と語った。
自動車総連は自動車関連の労働組合で組織され、1015組合が加盟、78万人超で構成している。今後、12月12日の組織内機関会議で取り組み方針を確認。26年1月15日に開く中央委員会で正式決定する予定。
自動車総連の上位組織にあたる連合は、賃上げ率(定昇分含む)が24年に5.10%、25年に5.25%と加速したものの、実質賃金はマイナスが続き、生活が向上したと実感している人は少数であるとし、26年春闘の基本構想で5%以上の賃上げ率を目指すとしている。
<日銀も注目する春闘の「初動のモメンタム(勢い)」>
日銀の植田和男総裁は10月の金融政策決定会合後の会見で、26年春闘の動向について、米国の関税措置の影響で収益が下押しされている製造業、中でも「自動車関係は注意深くみていきたい」と指摘。政策判断を巡っては、春闘の「初動のモメンタムを確認したい」と述べた。
SMBC日興証券の集計(11月13日時点)によると、TOPIX(東証株価指数)を構成する3月決算企業の26年3月期の通期純利益予想は、製造業の落ち込みが響き、前年比3.1%減の43兆2406億円となっている。
製造業は同8.4%減の20兆4997億円と予想。このうち輸送用機器は同30.5%減の4兆7798億円と落ち込みが大きくなっている。





