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マクロスコープ:増える苦学生、食費・家賃上昇が生活直撃 政治空白でしわ寄せさらに

2025年10月16日(木)16時11分

 10月16日、 生活費を稼ぐために、アルバイトに励む大学生が増えている。都内で7月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Yusuke Ogawa

[東京 16日 ロイター] - 生活費を稼ぐために、アルバイトに励む大学生が増えている。バイトに従事する学生の割合は2025年は73.5%と、23年と比べて約5ポイント上昇した。親からの仕送りが減少傾向にある中、食料品などの物価高騰や家賃の上昇が下宿生らの暮らしを直撃している。自公連立解消に伴う政局混迷で政府の物価高対策が後手に回れば、若い世代へのしわ寄せはさらに及びそうだ。

就職情報サイトのマイナビが4年制大学に通う学生約5000人を対象に調査した。「現在バイトをしている」と回答した人の割合が最も多く、「現在はしていないがバイト経験はある」が17.1%、「就業経験なし」は9.3%だった。新型コロナウイルス流行の影響で大学生の就業率は21年に約63%に低下したが、その後は増加傾向が続いている。

25年の学生バイトの平均年収(手取り額)は約70万円だった。経験職種は飲食店の接客・調理がトップで、塾講師やコンビニエンスストアの店員などが上位に入った。単発バイトを仲介するスマートフォンアプリが普及したこともあり、バイトをしている学生のうち、2つ以上の仕事を掛け持ちしている人の割合は3割超に達している。

就業中の学生に「経済的状況」を尋ねた設問では、「ゆとりがない」と回答した人の割合が約55%と、3年前と比べて約6ポイント上昇した。

背景の一つには、保護者の仕送り額が減少していることが挙げられる。日本学生支援機構の調べによると、昼間部に通う大学生への家庭からの給付額は、22年は年間約109万円だった。2010年と比較して約13万円減少し、ピークだった1990年代半ばの約7割の水準に落ち込んでいる。これに伴い、学生の収入総額に占める家庭給付の割合は、直近では約56%に低下し、アルバイト収入は約2割に高まった。

<強まるインフレ圧力、岩盤物価に異変>

バイト率の上昇については、物価高という別の要因も深く関係する。コメなどの食品高騰のほか、長年にわたり価格が安定し「岩盤物価」と言われてきた家賃の値上がりが若者の懐を圧迫している。不動産情報サービスのアットホームが公表した賃貸マンションの平均家賃動向では、東京23区内の単身者向け物件の募集価格が今年5月に初めて10万円の大台を超えた。

不動産価値の向上などが理由で、8月は同10万3952円と、昨年の同時期より1割も高い。今月からバイトの最低賃金が各都道府県で順次引き上げられるとはいえ、物価の上昇スピードに追い付いていないのが実情だ。

自民党の高市早苗総裁は物価高対策を最優先にする方針を掲げるが、公明党が自民との連立から離脱することになり、政策の実現には不透明感が漂い始めている。足元では円安・ドル高の傾向に拍車がかかるなどインフレ圧力は依然として強く、学業とバイトの両立に迫られる大学生は今後も増えそうだ。

第一生命経済研究所の星野卓也・主席エコノミストは「長らく雇用増加の主な牽引役は女性と高齢者だったが、ここにきて学生をはじめとした25歳未満の若者の存在感が大きくなっている」と指摘した上で、税制改正により学生バイトの働き控えにつながる「年収103万円の壁」が解消したことも、就業率の上昇に寄与している可能性があるとの見方を示した。

(小川悠介 編集:橋本浩)

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