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アングル:中国コロナデモで冷え込む市場、海外勢は早期の規制緩和を期待

2022年11月29日(火)03時36分

中国の厳格な「ゼロコロナ」政策を巡り中国全土に波及した異例の抗議活動によって、政治的不確実性の新たな波が引き起こされる可能性がある。11月27日、ソーシャルメディアに投稿された上海の抗議活動(2022年 ロイター/Eva Rammeloo/via REUTERS)

[ロンドン 28日 ロイター] - 中国の厳格な「ゼロコロナ」政策を巡り中国全土に波及した異例の抗議活動によって、政治的不確実性の新たな波が引き起こされる可能性がある。だが、海外の投資家は28日、抗議活動によって中国の経済再開が早まるかも知れないとの期待を示した。

中国の習近平氏が約10年前に国家主席に就任して以来初となる市民的不服従が広がる中、28日の中国株式市場は下落し、CSI300指数は約1カ月ぶりの大幅な下げを記録。人民元が暴落したほか、世界の株価も圧力を受け、原油価格は一時3%安となった。

プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフストラテジスト、シーマ・シャー氏は「抗議活動は短期的に懸念材料だ」と指摘。ただ、最近の出来事は風向きが変わりつつあることを裏付けるとし、「これまで慎重に見ていたが、新型コロナ規制からの経済再開を巡り重要な変化が起きている」と述べた。

中国の市場は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした政治的リスクの回避、厳しい新型コロナ規制による経済成長への懸念、不動産セクターを巡る懸念などが重なり、厳しい1年となっている。

国際金融協会(IIF)のデータによると、ロシアがウクライナに侵攻した2月以降、中国の債券ポートフォリオから資金が毎月流出し、流出額は9カ月間で総額1051億ドルに達した。中国の株式ポートフォリオは10月だけで76億ドルが流出し、3月以降で最大となった。

こうした中、中国CSI300指数や香港ハンセン指数は年初来で20%超下落。ただ、中国政府が厳格なコロナ規制の一部を緩和する可能性があるとの期待から、両指数は10月末に付けた年初来安値からやや回復している。

アムンディのグローバル最高投資責任者(CIO)、ビンセント・モルティエ氏は「直近の出来事は経済再開の正当性を強化する」と言及。大都市にいる若年層の失業への影響を考慮すると、新型コロナに関連する経済的な痛みは中国の政治的な問題になり始めており、「社会不安を回避したい」中国政府への圧力になるとした。

中国では若年層の失業率が7月に約20%と過去最高に達した。

DWSグループのアジア太平洋地域担当CIO、ショーン・テイラー氏は抗議デモが続けば、リスクプレミアムはさらに高まると予想。中国がゼロコロナ政策から脱却すれば、中国株は15─20%上昇する見込みだが、それまでの中国市場は「かなり厳しい」とした。

ジュリアス・ベアーのアジア担当エクイティリサーチアナリスト、リチャード・タン氏は、海外投資家は国内投資家よりも最近の出来事について懸念しており、この見解の相違がH株に対するA株のアウトパフォームにつながると指摘。一方で、事態が大きく悪化しなければ、投資家の関心は12月の共産党による中央経済工作会議に戻り、新型コロナ政策に関する修正が確認されるだろうとした。

一方で、より慎重な見方もある。UBSのグローバル・ウェルス・マネジメントCIO、マーク・ヘーフェル氏は、ゼロコロナ政策に起因する社会的不満が中国政府の政策実行におけるリスクを高めていると警告。「中国の経済や市場の逆風が今後数カ月にわたって大きく和らぐとは想定しておらず、中国株については中立を維持する。また、中国の回復の遅れは世界経済や市場にとってのリスクだ」と語った。

(Karin Strohecker記者、Dhara Ranasinghe記者、Summer Zhen記者)

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