ニュース速報

ビジネス

インタビュー:中銀デジタル通貨、仮想通貨に強い追い風=マネックス社長

2020年11月25日(水)10時25分

マネックスグループの松本大社長は、ロイターのインタビューで、日銀が開発を進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)が発行されれば、仮想通貨交換業・コインチェックのビジネスにも「強烈な追い風が吹く」との見通しを示した。写真は2018年4月のインタビューで語る松本氏。(2020年 ロイター/Toru Hanai )

[東京 25日 ロイター] - マネックスグループの松本大社長は、ロイターのインタビューで、日銀が開発を進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)が発行されれば暗号資産(仮想通貨)とCBDCの交換が飛躍的に増え、傘下の仮想通貨交換業・コインチェックのビジネスにも「強烈な追い風が吹く」との見通しを示した。

松本社長は「仮想通貨交換業の社会的意義は変化している」と指摘。「仮想通貨交換所で蓄積され磨かれている技術やノウハウが、新しいデジタル経済の基盤となるCBDCや(基軸通貨としての性格を帯び始めた)ビットコインを管理するために重要な技術になってきている」と述べた。

2018年のコインチェック買収時、松本社長は将来的にコインチェックを上場させる方針を示していたが、インタビューでは、上場時期について具体的なコメントは避けた。

<飛躍的に上がる「インターオペラビリティー」>

松本社長は「CBDCができれば、仮想通貨のインターオペラビリティー(相互交換性)が飛躍的に上がると思われる」とみている。

コインチェックは銀行口座を有しているが、「日本でも世界でも仮想通貨交換業者はなかなか銀行と付き合いができない」(松本社長)とされ、法定通貨と仮想通貨の交換がスムーズに行われない現状がある。

しかし、潮目は変わりつつある。20日には米通貨管理庁が銀行に対し産業によって差別的な扱いをやめるよう求める規制案を公表した。松本社長は、今後「(交換業者が)もっと簡単に銀行口座を持つことができるようになる可能性が高い」との見通しを示した。

CBDCは「(日銀ネットやSWIFTのような従来のネットワークではなく)もっとデジタルネイティブなネットワークを使うようになるはずだ」と指摘。「仮想通貨とCBDCの交換がDVP(商品の引き渡しと代金支払いをリンクさせる仕組み)にできる可能性がある。そうすれば安全なので、取引量は増えるだろう」と話した。

<CBDC、デジタル経済の観点でも議論を>

松本社長は、日銀のCBDCに関する取り組み方針について「CBDCは経済的にも大変大きな影響をいろいろな分野でもたらす可能性があるし、経済安全保障にも大きな意味合いを持ってくる」とみている。「日本のような自由主義経済大国が取り組もうとしていることは大変大きな意味を持っている」と評価した。

ただ、中国のデジタル人民元を念頭に置いた経済安保の観点だけでなく、デジタル経済の観点からの検討も重要だと指摘。「デジタル経済の関係でCBDCはこうあるべきだということを、経済界がもっと議論を深めて発信していくべきではないか」と語った。

民間でもデジタル通貨の研究が進んでいるが、松本社長は「CBDCのようになろうとしているプロジェクトについては『中二階はいらない』となるのではないか」と懐疑的な見方を示した。

<ビットコインが帯び始めた「基軸通貨性」>

足元ではビットコインの価格が高騰している。松本社長は「今回の値上がりの一番大きな理由は、ペイパルが支払いをビットコインでできるようにしたことだ」とみている。

中長期的な価格上昇要因としては、各国の金融緩和のほか、ビットコインに基軸通貨としての性格が出てきつつあることを挙げた。松本社長は「ビットコインの基軸通貨性は上がりつつある。あまりにも大きいから改ざんがほぼ不可能。設計が上手にできている」などと指摘した。

米フェイスブックの「リブラ」構想を巡り、マネックスはリブラ協会への加入を申請中だ。松本社長は「リブラは迷走している」とする半面で、「否定するものではない。何も動きはなく、あえてアプリケーションを取り下げる必要もない」との姿勢を示した。

インタビューは24日に実施しました。

(和田崇彦 編集:田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中