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アングル:市場「バイデン決め打ち」にリスク、16年の再燃警戒も
10月23日、11月3日の米大統領選投票日まであと1週間余りとなった今、民主党候補バイデン前副大統領のトランプ大統領に対する支持率の優位がわずかに縮小している。テネシー州ナッシュビルで22日撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)
[ニューヨーク 23日 ロイター] - 11月3日の米大統領選投票日まであと1週間余りとなった今、民主党候補バイデン前副大統領のトランプ大統領に対する支持率の優位がわずかに縮小している。その意味で投資家が、バイデン氏が明確な勝利を収めるといささか過信しているきらいもありそうだ。
多くの市場参加者はここ数週間で、大統領選が引き起こすボラティリティーで利益を得るポジションを縮小し、再生可能エネルギー株や大麻関連株を含め、バイデン氏勝利が追い風となりそうな資産を買い増している。
ただバイデン氏の世論調査におけるリードが足元で縮まるとともに、市場の一部から、トランプ氏による予想外の逆転勝利、あるいは勝者がはっきりしない選挙結果が2016年のように暴力的なポジションの巻き戻しを招く恐れがあると心配する声が聞かれた。16年当時も市場は民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の勝利に賭ける取引が圧倒的で、見事にその期待が裏切られた。
リアルクリアポリティクスのデータに基づくと、22日に行われた最後の討論会後にトランプ氏の勝利確率は約1%ポイント上がって36.3%となったが、バイデン氏の確率は依然64.4%と大きな差をつけている。
それでもケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのチーフ・グローバル・ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「市場はトランプ氏が挽回する可能性を幾分か過小評価している」と指摘した。
特に選挙後の波乱に弱そうな資産として挙げられるのは、インベスコ・ソーラーETF(上場投資信託)
サスケハナ・ファイナンシャル・グループのデリバティブ戦略共同責任者クリストファー・マーフィー氏の計算では、選挙が想定外の結果になれば、同ETFは上下どちらにも1日当たり最大で11%振れてもおかしくないことがオプション価格から読み取れる。
マーフィー氏は、ハイテク株の比重が大きいインベスコQQQトラスト・シリーズ1ETF
また複数のアナリストは、大方の予想に反してトランプ氏が勝てば、メキシコペソ
16年に比べれば市場の乱高下に対するヘッジはずっと手厚いのだが、過去2週間ではそうしたポジションが縮小されていた点を懸念する向きもある。例えば12月に行使期限を迎えるS&P総合500種のオプションが織り込む大統領選後の株価変動は、2週間前よりも小さくなった。
RBCキャピタル・マーケッツの株式デリバティブ・ストラテジスト、エイミー・ウー氏は、株式と金利のオプションはバイデン氏の勝利を織り込みつつあり、民主党の上下両院過半数獲得シナリオにも賭けていることと合わせると、市場はそうしたポジションにかなり自己満足感を抱いているとの見方を示した。
もっとも株式投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX)は足元で28よりは下がらず、10台前半から半ばだった16年の大統領選前を大きく上回っており、投資家が手放しで楽観しているわけではない。
もし大統領選後に混乱が生じるか、どちらの候補が勝ったかはっきりしない場合は、市場の不安定な状況がより長引きそうだ。00年の大統領選でフロリダ州の開票結果を巡り、共和党のジョージ・W・ブッシュ氏(子)と民主党のアル・ゴア氏が争った局面でも、連邦最高裁が再集計の停止を命じるまでにS&P総合500種が一時10%下がる事態になった。
ニューバーガー・バーマン・グループのジョセフ・アマート社長兼最高投資責任者は、そうした不透明感が漂う状況では、今年のS&P500の戻りを主にけん引してきたハイテク株やモメンタム株が打撃を受けかねないと警戒する。
アマート氏は「選挙後の混乱でリスクオフの環境が生まれれば、恐らくそれまで値動きが最も良かった銘柄の足場がもろくなる。リスクオフのシナリオにおいては、それまで真っ先に大きく値上がりしていた銘柄ほど売られるケースが多々ある」と述べた。
(Saqib Iqbal Ahmed記者 April Joyner記者)