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焦点:国内生保、下期も超長期債に前向き 相対的な「魅力」継続

2020年10月28日(水)10時47分

国内主要生保の2020年度下期一般勘定資産運用計画が出そろった。低金利環境が世界的に広がる中、日本の超長期国債の相対的な魅力が増しており、年度後半も金利上昇局面で超長期国債を買い入れたいとする生保が多い。写真は記者会見で金融政策を語る黒田東彦日銀総裁。今年1月21日に東京で撮影。(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

伊賀大記

[東京 28日 ロイター] - 国内主要生保の2020年度下期一般勘定資産運用計画が出そろった。低金利環境が世界的に広がる中、日本の超長期国債の相対的な魅力が増しており、年度後半も金利上昇局面で超長期国債を買い入れたいとする生保が多い。ヘッジ外債は国債(ソブリン)を減少させる一方、社債などクレジット物を増加させる傾向が続く見通しだ。

<超長期債は金利上昇局面で買い入れ>

日本証券業協会が公表している公社債店頭売買高によると、生損保による超長期国債の買い越し額は、今年度上期(4─9月)で平均5699億円。前年度平均の4097億円(上期3156億円、下期5038億円)に比べ、ハイペースとなっている。

下期にペースダウンするか、高水準の買い入れが続くかが注目されるが、今回明らかになった下期の運用計画では「金利上昇局面で買い入れたい」(明治安田、第一、住友など)と、引き続き積極的な姿勢を見せる生保が多い。

足元で超長期債の金利は20年債で0.4%台、30年債で0.6%台。30年債で1%とされる「理想」にはまだ遠いが、世界的な低金利環境が継続すると見込まれる中で、相対的な利回り面の魅力が増しているためだ。

2025年の国際資本基準適用による経済価値ベースへの移行を見据えたデュレーションの長期化も意識される中、相対的に高い利回りを稼げる日本の超長期債への需要は下期も根強い見通しだ。

一方、超長期債よりも高い利回りが見込める社債などクレジット物を円債投資では重視するという生保もある。日本生命は、超長期債にも一定程度投資する計画だが、中心は円建て社債や通貨スワップを使って円金利化させた外国社債などとなる計画だ。

<外債はクレジット重視傾向続く>

日本の超長期債を積み増す半面、多くの生保で上期、減少となったのが外国債(ソブリン)を対象とした、為替ヘッジ付き外債だ。新型コロナ禍に対応し、各国の中央銀行が金融緩和を実施したことで、低金利化が進み、投資妙味が低下したためだ。

為替ヘッジコストを考慮した海外の10年国債金利は足元で、米国で0.2%程度、ドイツでマイナス0.3%程度。日本の超長期債の利回り0.4─0.6%台の方が魅力的であり、下期もソブリン対象のヘッジ外債は減少計画とする生保が多い。

一方、外国社債などクレジット物を対象としたヘッジ外債は増加傾向にある。ソブリンと比べ、現地情報を入手するのが難しく、流動性も低いためリスクは高いが、その分、利回りが高いのが魅力だ。現地情報に詳しい海外の資産運用会社への委託を進めるなどの対応が下期も継続する見通しだ。

オープン外債も減少傾向が続いている。為替ヘッジを付けない分、利回りは高くなるが、外国債はもともとの金利水準が低下しているため魅力が低下していることに加え、為替面でも魅力が乏しいとみられている。

オープン外債は円安時に含み益、円高時に含み損が発生する。下期もしくは年度末のドル/円予想をみると、下限は100円付近でほとんど変わらないが、上限の平均は114.4円から111.6円に低下した。円高懸念が強まっているわけではいが、外国債の低い金利を考慮すると為替メリットが期待できない分、魅力が乏しい。

<株式は慎重、ESGは積極的>

株式も横ばい方針が多い。海外のヘッジファンドなどに投資するオルタナティブ投資には引き続き、積極的な生保が多いが、国内株には依然慎重だ。

日経平均のレンジ予想は、各社平均で下限が4月時点の1万5500円から1万9600円に4100円引き上げられ、株価急落への懸念が後退していることを示している。一方で、上限平均は2万2800円から2万5550円と2750円の上方修正にとどまっている。

明治安田生命では、日経平均<.N225>は日銀によるETF(上場投資信託)買いが株価を支えるものの、新型コロナウイルスの感染第2波や景気回復の遅れなどへの警戒が続き、20年度末にかけて一時的に調整する可能性があるとみている。

今回、目立ったのがESG(環境・社会的責任・企業統治)評価の積極的な導入だ。日本生命ではこれまで株式や社債など一部資産を対象に考慮してきたが、2021年4月から全資産での投融資プロセスで判断に組み込む。ESGは中長期の資産運用において、もはやリスク低減とリターン向上に不可欠な要素だという。

第一生命では、9月から外国株式の運用目標(ベンチマーク)にESG指数を採用した。同社のESGテーマ型投資の累計投資金額は足元で約6600億円となっており、今後も増加させる方針だ。

ロイター
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