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日産社長「歴史の新たな扉開く」、EV「アリア」を来年半ば日本で発売

2020年07月15日(水)18時09分

 7月15日、日産自動車は、電気自動車(EV)「アリア」を世界で初公開し、2021年半ばに日本でまず発売すると発表した。写真は「アリア」。横浜で14日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[横浜市 15日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は15日、電気自動車(EV)「アリア」を世界で初公開し、2021年半ばに日本でまず発売すると発表した。内田誠社長は発表会で「日産の歴史の新たな扉を開く」と語った。

EVとして世界初の量産車「リーフ」に続く約10年ぶりの戦略車で、同社初の多目的スポーツ車(SUV)タイプ。補助金を引いた実質購入価格は約500万円からとなっている。欧米・中国でも投入予定で販売目標は非公表だが、複数の関係者によると、最初の1年間で約3万台を計画する。

同社はカルロス・ゴーン前会長の拡大路線による過剰設備や販売不振などで業績が悪化、トップの不正でブランド力も落ちており、最新の運転支援・コネクテッド技術を搭載したアリアを「復活」の象徴にしたい考え。アリアからブランドロゴ「NISSAN」のデザインも約20年ぶりに変更し、他の車も全面改良などに合わせて順次切り替える。

発表会で内田社長は「今後、年間100万台以上の電動車を販売していく。アリアはそんな新しい時代の日産を象徴する」と指摘した。5.1秒で時速100キロに加速できる性能を挙げ、「(日産のスポーツ車)『フェアレディZ』に匹敵する」一方、安定性と静粛性も兼ね備え、「日産車の魅力がすべて詰まっている」と自信をみせた。

開発期間は約5年。車両開発主管の中嶋光氏は「『今の日産を象徴する車で将来の日産につながるところをしっかりと見せないといけない車。妥協してつくるな』と経営陣から言われた」と話し、「そんなに利益は出ない。今はそのくらい頑張っている」と語った。

販売規模は中国が最多、次が欧米、日本と続く見込み。前会長がトップ時代は日本の新車投入が後回しで「日本軽視」とみられていたが、今回は日本で最初に発売する。中嶋氏は「日産は日本の会社。日産を象徴する車を日本の顧客にまず乗ってもらいたい」と話した。

日本・欧米向けは高価格帯モデルを手掛ける栃木工場で生産する。関係者によると、同工場で来年中は4万台を生産し、将来的に計10万台に引き上げる。中国向けは現地生産する。

65kWhと90kWhのバッテリー、2輪(2WD)と4輪(AWD)の駆動方式を用意し、航続距離は2WDの90kWh搭載車で最大610キロ。リーフでは初期型のユーザーからバッテリーの品質に不安の声が相次いだ時期もあったが、アリアは5年前後で車の寿命が来てもバッテリーは8割くらい残るようにしているという。気温に左右されずバッテリー温度を一定に保つ水冷式の温度調整機能も備えた。

EV専用プラットフォームを開発し、広い室内空間も実現。ベンチマークとする米テスラが3月発売したSUV「モデルY」に比べ、中嶋氏は「室内の広さは圧倒的に勝っている」と話す。モデルYは発売からわずか4カ月で3000ドル値下げし、4万9990ドル(約535万円)からとした。

東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、最新技術を搭載したアリアは「再生のシンボル」としては好感できるが、「高価格で台数が出にくく、発売も来年半ばと気の長い話。業績への貢献は不明」と話す。

SBI証券の遠藤功治企業調査部長は「日産にもしっかりした技術や開発力がまだ残っており、非常に完成度の高い車だと市場にメッセージを届けられる可能性はあるが、今後、新型の『ローグ』や『ノート』を投入し、業績向上につながるような量販車が数車種出るのが理想だろう」と語った。

日産は他社が懐疑的だったEVをいち早くエコカーの本命と位置づけ、10年末にリーフを投入。先陣を切り市場を開拓してきたが、販売は想定通りに伸びてこなかった。いまや新興企業のテスラが台頭し、環境規制強化を背景に各社も開発・投入を急ぐなど競争は激化しており、新生・日産の力が試される。

*重複した段落を削除して再送します。

(白木真紀 取材協力:田実直美、白水徳彦 編集:田中志保、青山敦子)

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