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米失業保険申請131.4万件に減少、依然高止まり

2020年07月10日(金)03時48分

米労働省が9日発表した4日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は131万4000件となった。写真はアーカンソー州フォートスミスで失業保険申請に並ぶ市民ら。4月撮影(2020年 ロイター/NICK OXFORD)

[ワシントン 9日 ロイター] - 米労働省が9日発表した4日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は131万4000件となった。前週の141万3000件からは減少したものの、需要の弱さや新型コロナウイルス感染件数の再拡大で依然として非常に高い水準だった。6月は雇用者数の伸びが過去最大となったが、労働市場が引き続き弱含むことを示唆した。市場予想は137万5000件だった。

失業保険申請件数は3月下旬に過去最悪となる686万7000件を付けた。その後、徐々に減少しているものの、2007─09年の世界金融危機のピークと比べ約2倍の水準を保っている。

1週間遅れで発表される失業保険受給総数は、6月27日までの週に1806万2000件と、前週の1876万件から減少した。5月上旬には過去最悪の2491万2000件を付けていた。

6月第3週時点で何らかの失業手当を受けていた人は3290万人と、中旬から141万1000人増加した。

失業保険申請件数は労働市場の現状を映し出す指標とされている。今回の指標のような傾向が続いた場合、7月の雇用統計で雇用の伸びが抑制される可能性がある。

MUFG(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「独立記念日(4日)の祝日に伴い失業保険申請が抑えられた可能性もあるが、決して経済を取り巻く問題が解決したわけではなく、注意を要する。全体の失業者数や受給総数は今回の景気後退(リセッション)局面で依然、最悪の状態が続いている」と述べた。

2日に発表された6月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月から480万人増となり、1939年の統計開始以降で最多となった。3月中旬に新型コロナの感染拡大を抑えるためにレストランやバー、ジム、歯科医などが休業した際に一時解雇された労働者が再雇用された。

申請件数はジョージア州、カリフォルニア州、フロリダ州で大きく減少。ただ事業再開に伴い、フロリダ州やテキサス州、カリフォルニア州などでは新型コロナの感染件数の伸びが過去最多を記録し、各州は経済活動再開の動きの後退または停止を余儀なくされた。

米経済は封鎖措置導入前の2月に景気後退(リセッション)入りした。企業は軟調な需要に直面しており、一時解雇の第2波をあおっている。小売業から航空業まで幅広い業種で企業が人員削減や一時帰休を発表している。

さらに、政府が導入した雇用支援制度(給与保護プログラム、PPP)は縮小している。PPPは、企業が政府から受けた融資を従業員の賃金に充てた場合、一部の返済が不要となる。

全米独立事業者協会(NFIB)が先週公表した調査では、小企業が雇用を削減していることが示され、「多くの事業主は4月に融資を受けた。6月以降、雇用を維持することができない」とした。

政府はPPPの申請期限を8月8日まで延ばすことを決めた。

エコノミストは、失業保険受給総数の減少にはPPPが貢献していると指摘。ただPPPの恩恵は薄れつつある。

マリナー・ウエルス・アドバイザーズ(カンザス州)のチーフエコノミスト、ビル・グレイナー氏は「感染拡大を受け、まず経営破綻したのは初期の衝撃に耐えるための資金がなかった中小企業だった。だが現在は、規模が大きい企業が経営破綻している。原油安と原油需要の減少を受け、特に原油関連産業で経営破たんが相次ぐと予想している」と述べた。

ナロフ・エコノミクス(ペンシルベニア州)のチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「経済の回復過程を巡り、先行き不透明感が台頭する時期に入った。企業は賢明に行動する。将来的な需要を巡る先行き不透明感が存在している時は、採用には慎重になるか、従業員数の自然減を待つかが最善の選択となる」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
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