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4─6月は2桁のマイナス成長、日銀は大きな緩和措置とらず=木内元審議委員

2020年04月08日(水)17時25分

野村総合研究所・エグゼクティブエコノミスト(元日銀審議委員)の木内登英氏は、ロイターとの電話インタビューで、緊急事態宣言を受け、4─6月期の日本経済は2桁のマイナス成長になる可能性があると指摘。写真は4月7日、東京銀座で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 8日 ロイター] - 野村総合研究所・エグゼクティブエコノミスト(元日銀審議委員)の木内登英氏は、ロイターとの電話インタビューで、緊急事態宣言を受け、4─6月期の日本経済は2桁のマイナス成長になる可能性があると指摘した。日銀は当面国債買い入れを増やすなど市場安定化策を中心に対応するが、4月末の決定会合では大きな緩和措置はとらないとの見方を示した。

<緊急事態宣言で経済への打撃不可避、2次補正の確率高い>

木内氏は、政府が現在打ち出している経済対策について「景気浮揚ではなく、被害を受けている企業・個人をしっかり支えることが主眼だ」と指摘。「企業・家計への給付金や社会保険料・税金猶予が中心なので、景気浮揚効果はそれほど大きくない」とみている。このため、新型コロナの経済への影響が長引けば、もっと財政出動が必要になり、「かなりの確率で近い将来、2次補正が打たれる可能性が高い」と話す。

政府は、7日に取りまとめた経済対策には2つの段階があるとしており、第一弾は「緊急支援フェーズ」、第二弾では「V字回復フェーズ」と説明している。

木内氏は「コロナが終息した際に観光業等支援する措置は含まれているが、すぐに使える金ではない」とし、いわゆる「V字回復フェーズ」に入る段階までの日本経済の落ち込みに警戒感を示す。

さらに、7都府県で緊急事態宣言が発出されたことで、外出自粛が増えるとの見方から「4-5月は、相当経済は悪化するだろう。欧米向けの輸出も落ち込む見通しなので、内外需ともに相当落ち込む。欧米もそうだが、日本の4-6月期は2桁のマイナス成長はまぬかれないだろう」と予測する。

<日銀、マイナス金利据え置きは大きなメッセージ>

政府が緊急の経済対策を取りまとめる一方で、日本銀行も積極的な危機対応を実行している。金融市場が不安定な状況が続いているため、日銀は当面の間は「市場安定化策が中心となるだろう」と木内氏は話す。

「国内金融機関に問題が起こらないよう流動性供給する。そのために日銀はすでに事実上無制限に国債を購入することを表明しているが、現行の枠組み内で国債買い入れを増やしていく」と分析する。

木内氏は、日銀が現在実行している政策について「結果的に政府が国債を大量に発行する中、日銀が事実上それを大量に買い入れる動きが続くだろう。つまり、事実上の財政ファイナンスがすでに行われており、今後も続く」と指摘した。

日銀が4月27-28日に予定している金融政策決定会合については「大きい緩和措置はないだろう」と予想。前回の決定会合で、マイナス金利を深堀しなかったのは大きなメッセージだと分析し、「利下げによって金融システムを傷めてしまうことを日銀は相当懸念しており、急速な円高がない限りマイナス金利の深堀りはしないだろう」という。

足元の日経平均株価は、8日時点で1万9000円台まで回復してきているが、金融市場の不安定な状況が続く可能性は捨てきれない。

木内氏は「今後さらに株安になったら、ETF(上場投資信託)買い入れのさらなる増額はありうる」と予測した。

*この電話インタビューは7日に実施しました。

(インタビュアー:木原麗花)

(日本語記事作成:浜田寛子 編集:石田仁志)

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