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消費税の期間限定引き下げも検討すべき=石破・自民元幹事長

2020年03月12日(木)12時04分

 自民党の石破元幹事長はロイターとのインタビューに応じ、現在の世界的な経済ショックについて、国内経済対策として、消費税率の期間限定引き下げなどの柔軟運用も検討すべきと提案した。写真は2018年9月、都内で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 12日 ロイター] - 自民党の石破茂元幹事長は11日、ロイターとのインタビューに応じ、現在の世界的な経済ショックについて、新型コロナウイルスの感染拡大は「一つの引き金」に過ぎず、本質は想定されていた中国・世界経済の調整であるとの見方を示し、国内経済対策として、消費税率の期間限定引き下げなどの柔軟運用も検討すべきと提案した。また、東京五輪・パラリンピックの延期・中止に備えた準備は必要との見解を示した。

<アベノミクス、急激な路線転換はできず>

石破元幹事長はまず、アベノミクスについて「株価を上げたので株式保有者は金持ちになった。マネタリーベースが増えて円が安くなったため、海外の方が日本株を安く買った」と説明。ただ「株式保有者は日本国民の9%しかおらず、株式市場至上主義で経営者が賃金を引き上げずコストカットを重視するため、株式を保有していない多くの労働者は幸せになっていない」と指摘した。

もっとも、アベノミクスを踏まえた今後あるべき財政・金融政策については「ここまで(大盤振る舞いを)やってしまった以上は、いきなり緊縮財政・増税、金利引き上げを行えば、経済は失速する。失速して墜落させるわけにはいかない」とし、急激な路線転換は難しいとの見解を示した。

アベノミクスの金看板である日銀の大規模な金融緩和には「低金利の光と影がある」と述べ、特に地方金融機関について「メガバンクのように海外展開や支店閉鎖の余力がない。倒れることは絶対に防がないといけない」と警戒感を示した。

<経済悪化への対応、低所得層給付や消費税の柔軟運用も>

足元では、新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念から金融市場が急変動し経済の急速な悪化もみられているが、石破氏は「コロナウイルスは一つの引き金に過ぎず、こういうことは起こると思っていた」と述べ、本質は「中国・世界経済の調整だ」と表現した。

「まさかポンパドゥール夫人のように『わが亡き後に洪水よ来たれ』と政権が考えていたとは思わない」と付け加え、政権は一定の想定をしていたはずとの期待を示した。

その上で、こうした経済の悪化への対策として「乗数効果の高い公共事業は必要」と指摘し、老朽化したインフラの維持や新幹線・高速道路網のさらなる拡充を例に挙げた。また、増加している「年収200万円以下の低所得層に対していかに現金を行き渡らせるかが重要」として、各種給付策の重要性も強調した。

現在の経済環境では「消費税率はしばらく10%の水準で止めざるを得ない」とし、「景気に応じた消費税率の機動的な変動の研究も必要だ」と述べた。

与野党内では消費税の引き下げが議論されつつあるが、石破氏は「選挙で減税合戦に使われるのは望ましくない」との認識を示し、同時に「減税や給付は、低所得層と地方の体力の弱い中小企業など対象を絞るべき」とも指摘した。

<五輪対策は考えておくべき、新型コロナでは台湾と情報共有できたはず>

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一部では東京五輪・パラリンピックの開催延期や中止の観測が浮上しているが、石破氏は「(開催するかどうかは)国際オリンピック委員会(IOC)が決めること」と指摘。その上で、日本経済への影響については「(延期や中止を)想定していないからといって(延期・中止のリスクが)なくなるわけではないので、(延期・中止に備え)今から考える必要がある」と強調した。延期・中止の場合の政治責任の有無についてはコメントを控えた。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での新型コロナウイルス感染拡大への政府の対応については「英国籍の船であるにもかかわらず、英国政府が前面に出てこない。日本政府は人道的配慮で横浜港に停泊させており、諸外国に批判される筋合いはない」と述べた。

一方で、感染拡大防止で成果が大きいとされる台湾を例に挙げ「日本はもっと情報を共有できたのではないか」との見解も示した。

(竹本能文、木原麗花、リンダ・シーグ 編集:田中志保)

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