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アングル:日経平均バブル後最高値更新に現実味、金融政策への期待も支え

2019年12月13日(金)18時35分

 12月13日、米中通商協議が好転するとの期待を背景に日経平均株価は500円超の上昇をみせており、バブル後最高値の更新が現実味を帯びてきた。写真は2015年10月、都内の株価ボード前で撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

水野文也

[東京 13日 ロイター] - 米中通商協議が好転するとの期待を背景に日経平均株価は500円超の上昇をみせており、バブル後最高値の更新が現実味を帯びてきた。最大の注目点であった米中関係悪化懸念が大きく後退したことで、今後の関心は金融政策にシフトするとの見方が出ている。米連邦準備理事会(FRB)が低金利政策を続けるとみられることも、株式市場の強気を支えている。

<米中休戦に歓喜、一段高に期待>

13日の東京株式市場で日経平均は大幅高となり、昨年10月2日の立ち会い中に付けたバブル後最高値2万4448円08銭(終値ベースで2万4270円62銭)の更新がみえてきた。そのきっかけは言うまでもなく、米中通商協議で一部の関税引き下げと15日の追加関税の発動延期で合意したと伝わったことだ。

トランプ米大統領は12日、中国との通商合意に「極めて近い」と表明。その後も米中が通商協議で「第1段階」の原則合意に達したとする関係筋の情報が伝わり、12日の米国株式市場は主要株価3指数が最高値を更新するなど景色が一変した。

市場では「発動先送りに関してはある程度想定されていたことだが、関税引き下げについてはそこまで織り込まれていなかった。報道通りだとしたら、市場にとってポジティブサプライズとなる」(三井住友トラスト・アセットマネジメント・シニアストラテジストの上野裕之氏)との声もあり、日経平均はこう着状態から一気に上放れに転じている。

この動きについて、大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は「米中に関してはこれ以上に良い話はないという印象もあるので、好材料出尽くしとなっても不思議ではないところだが、そうならないのは、ここがリスクオン相場のスタートと市場が認識しているため」と指摘。「来春まで米中休戦となることが前提条件となるが、日本株も一段高が期待できるようになってきた」と話す。

<米の低金利政策継続も買いの自信に>

米中関係が落ち着いたため、「次の関心事は金融政策になる」(SBI証券・投資調査部長の鈴木英之氏)とみる関係者が多い。その中では、先に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定したことが大きな意味を持つとみられる。

米連邦準備理事会(FRB)はFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50─1.75%に据え置くことを全会一致で決定。来年の米大統領選まで緩やかな経済成長が続き、失業も低水準にとどまるとの見方を示し、金利変更はないことを示唆していた。

これについて鈴木氏は「米中合意で景気の上向きが期待されるようになった中で、利上げしないとなれば、マーケットは安心して半年先、1年先の業績向上を先取りして買うことができる」と指摘。

岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏は「企業業績が好調で、さらに増益が期待できる時期に低金利が継続するのは、バブルの初期に起きる事象。PERやPBRなどの指標から日本株は割高ではなく、今はバブル相場と言えないが、少なくとも金融相場の期待は膨らんでいる」とみている。

景気の先行きに対する不安が後退するため、物色面では「ディフェンシブ系銘柄を外して、テクノロジー系銘柄の組み入れを優先する場面になりそうだ」(大和証券・木野内氏)との声が聞かれる。

(グラフ作成・編集:田中志保)

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