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米レポ市場混乱、大手銀の資金貸し出し意欲低下が原因か=BIS

2019年12月09日(月)13時14分

 12月6日、国際決済銀行(BIS)は、9月に米短期金融市場で金利が跳ね上がった問題について、米銀行大手4行が資金の貸し出しに消極的だったことやヘッジファンドの有担保の借り入れ需要の急増が原因だった可能性があるとの見解を示した。写真はサラエボで2017年6月撮影(2019年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロンドン 8日 ロイター] - 国際決済銀行(BIS)は、9月に米短期金融市場で金利が跳ね上がった問題について、米銀行大手4行が資金の貸し出しに消極的だったことやヘッジファンドの有担保の借り入れ需要の急増が原因だった可能性があるとの見解を示した。

米国債などを担保に金融機関やヘッジファンドなどが短期資金を融通し合う「レポ取引」の市場では9月半ばに資金需給がひっ迫し、金利が急騰。これを受けて米連邦準備理事会(FRB)はレポ市場への臨時資金供給を金融危機後初めて実施した。

資金需給をひっ迫させた要因は明確にはなっていないが、四半期の法人税納付や国債入札の決済立て込みに伴う混乱が指摘されてきた。BISのアナリストは、レポ市場の機能維持において、米4大銀行への依存度が高まっていたことが主な要因だった可能性を指摘した。

BISは報告書で4大銀行の名前は挙げていない。4行はレポ市場で主な資金の出し手となってきた。

翌日物レポ金利は通常、FRBの政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標近辺で推移する。ただ、9月下旬にはFF金利の誘導目標の4倍超である10%に跳ね上がり、米ドル資金調達市場の脆弱性について懸念が強まった。

BISによると、FRBが2017年10月に4兆ドル強のバランスシートの縮小を開始した際、市中銀行がFRBに預けるの準備預金も減少した。一方、銀行の米国債保有は急増した。

今年8月上旬に今後2年間の米債務上限の適用停止を盛り込んだ法案が成立して以降は、準備預金の減少が加速したという。

BISによると、FRBにある米財務省の口座残高は8月14─9月17日の期間に1200億ドル超減少し、結果として4大銀行のバッファーが薄くなるとともにレポ市場で資金を貸し出す意欲も低下したという。

BISのクラウディオ・ボリオ金融経済局長は、「このような混乱は、FRBの危機後の非伝統的な市場調節が市場の機能に重大な跡を残したと示唆している」と分析。

「銀行は長期間の潤沢な超過準備に慣れてしまっており、準備預金を引き出せば想定外の唐突な市場の調整が起きる可能性がある。まるで筋肉が萎縮したかのようだ」とした。

これに加え、ヘッジファンドは現物の米国債とデリバティブの裁定取引を行う資金を得るため、国債を担保とするレポ取引を通じた資金調達を拡大し、全体の資金需給のひっ迫に加担したという。

BISはまた、レポ金利の急騰は為替デリバティブ市場にも波及したと指摘した。

ロイター
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