ニュース速報

ビジネス

気候変動対策の強化、企業価値が最大2.3兆ドル喪失も=リポート

2019年12月09日(月)13時08分

 12月9日、各国政府が気候変動対策を強化することによって、2025年までに石油などの化石燃料を生産する企業や農業、自動車メーカーといった分野の企業の価値が最大で2兆3000億ドル失われる可能性があると警告するリポートを投資家グループが発表した。写真はムンバイで昨年5月撮影(2019年 ロイター/Francis MascarenhasFile Photo)

[ロンドン 9日 ロイター] - 各国政府が気候変動対策を強化することによって、2025年までに石油などの化石燃料を生産する企業や農業、自動車メーカーといった分野の企業の価値が最大で2兆3000億ドル失われる可能性があると警告するリポートを投資家グループが発表した。

リポートを発表したのは、総額86兆ドル資産を運用する投資家の国際組織、「責任投資原則(PRI)」で、国連が支援している。

2015年に採択され、2020年に本格運用が始まる気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」で定めれられた義務を果たそうと、締結国は今後数年間に二酸化炭素の排出を削減する取り組みを加速させる見通しだ。

同リポートは、急激な政策変更は現在の投資戦略を激しく混乱させるリスクがあると指摘している。

PRIのフィオナ・レイノルズ代表は「気候変動の現実が直視されるようになり、社会的な圧力が高まり、二酸化炭素の排出を減らす技術のコストが低下するとともに、各国政府が強硬措置を急ぐことなく気温の上昇を放置してしまうようなことはあり得ない」としたうえで、「これが資産、そしてより広範なシステムに対して巨大な脅威となる」と警告した。

最もリスクにさらされるのは化石燃料セクターで、現在の企業価値の3分の1が失われる可能性があるという。化石燃料は世界全体の温室効果ガスの3分の2を排出しているとされる。

石炭会社は企業価値の最大44%が失われ、世界有数の石油・ガスメジャーは現在の市場シェアの最大31%を奪われるとリポートは予測している。

同リポートはまた、石油需要は2027年前後にピークを迎えるとの見通しを示している。

一方で、電気自動車に多額の投資をした自動車メーカーや二酸化炭素の排出が少ないエネルギーに軸足を移した電力会社は企業価値が倍以上に膨らむ可能性があるなど、温暖化対策は勝ち組も生み出すとリポートは指摘している。

気候変動問題を議論する国連の会合である「第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)」が2日から13日にスペインのマドリードで開催されている。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中