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利下げ休止で大半が一致、政策変更要因示されず=FOMC議事要旨

2019年11月21日(木)08時30分

米連邦準備理事会(FRB)が20日公表した10月29─30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、今後の見通し変更につながる要因についてほとんど示唆されなかった。写真はワシントンのFRB本部。昨年8月撮影(2019年 ロイター/Chris Wattie)

[ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が20日公表した10月29─30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、今後の見通し変更につながる要因についてほとんど示唆されなかった。

FRBは10月のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50─1.75%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを8対2で決定。ただFRBは、利下げを今後休止する可能性があることを示唆した。

FRBは議事要旨で、25bpの利下げが決定されれば、「大半のFOMCメンバーは政策スタンスが緩やかな経済成長、堅固な労働市場、FRBの対称的な2%目標に近いインフレ率という見通しを支援するために十分調整されると判断した」とした。

FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は、今後金利を据え置くことを示唆した。景気見通しに「目に見える」変化がない限り姿勢を変えないと述べた。文言は声明には含まれていなかった。利下げは短期的には10月が最後であることを示す発言だ。

FRBは今年、3回利下げした。米中貿易摩擦の影響や世界経済の鈍化による製造業と設備投資、輸出の低迷から米経済を守る「サイクル半ばの調整」との位置づけだった。

議事要旨よると、何を基準に「目に見える変化」と見なすかはあまり話し合われなかった。ただ2人のメンバーは、経済成長が著しく鈍化しない限り、近いうちに利下げする可能性は低いことを明示するべきだと主張した。

FRBは今年の国内総生産(GDP)見通しを2.2%成長としている。FRBは潜在成長率を約2%とみており、それをやや上回る水準だ。

経済成長は今年鈍化したものの、一部の部門の弱さがより広範な経済に波及するとの懸念は具現化していない。経済は緩やかに伸び続けており、失業率は約50年ぶりの低水準にある。米経済の約70%を占める個人消費は持ちこたえている。

FRB内の意見は分かれている。ボストン地区連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は10月の利下げに反対票を投じた。FOMC以降、投票権のない複数のメンバーが10月の利下げに反対だったと明らかにした。

議事要旨は「世界経済の弱含みが続き、貿易摩擦を巡る先行き不透明感が高まる中、多くの参加者が今回の会合で控えめな追加緩和が適切であると判断した」と記載。一方、「一部の」参加者は利下げに反対だったとした。経済見通しは良好であり、物価はFRBの目標に戻ってきているほか、「金融政策の効果が表れるまでに時間がかかるため、過去の政策が経済に与える影響を見極める時間を設けた方が良い」との意見だった。

FRBはまた、米国の短期金融市場でレポ取引の金利が急騰したことを受け、短期金利に上昇圧力がかかっている場合、いつでもレポ取引により短期資金を調達できる常設レポ制度(SRF)の設置について一段と踏み込んだ議論をした。多くのメンバーが、ショック時に政策金利を支える「便利な緊急対策となり得る」とする一方、準備金が十分蓄えられればこうした対策の必要性はあまりないかもしれないとの意見もあった。最終的な決定はなかった。

FRBは年末までにあと1回、12月11―12日にFOMCを開く。市場は少なくとも20年半ばまでは金利を据え置くとみている。

ブラックロック債券担当部門のボブ・ミラー氏は「FOMCは、当面は金利を据え置く意向だ。3度連続の利下げ後、中期サイクルの調整は終わった。それ以降に関しては、議事要旨にある新たな情報は限られていた」と指摘した。

これまでの利下げは、米中貿易戦争や世界経済の減速による国内経済への打撃を事前に防ぐための措置と位置づけられている。

米金融市場は議事要旨にほとんど反応しなかた。

*内容を追加しました。

ロイター
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