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アングル:日経平均、高揚感なき高値更新 支えは自社株買い

2019年10月16日(水)18時45分

10月16日、日経平均株価は年初来高値を更新したものの、市場に高揚感は乏しい。東京証券取引所で1月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

杉山健太郎

[東京 16日 ロイター] - 日経平均株価は16日に年初来高値を更新したものの、市場に高揚感は乏しい。米中通商交渉に不透明感が残る中、徐々に上げ幅を削る展開となり、売買ボリュームの増加も限定的だった。過去最高水準の自社株買いが下値を支えるとみられるが、海外材料には「失望リスク」が付きまとう。

日経平均は11日からの3営業日で一時1000円を超える上昇をみせたが、東証1部売買代金の平均は約2兆3100億円とそれほど膨らまなかった。「ヘッジファンド勢の踏み上げや買い戻しが中心で楽観ムードは乏しい」(国内証券)という。

個別銘柄でみると、景況感の悪化が意識されて売られていたバリュー系銘柄や、シクリカル系銘柄の上昇が目立った。東京エレクトロン<8035.T>、アドバンテスト<6857.T>、SCREENホールディングス<7735.T>といった半導体関連、トヨタ自動車<7203.T>、日立製作所<6501.T>などが年初来高値を更新した。

市場では「高揚感はまったくない」(別の国内証券)との声が出る中、日経平均は寄り付き直後に年初来高値を更新した後は、伸び悩む展開となった。

3月期決算企業の「試金石」とされる安川電機<6506.T>の株価が堅調となるなど、明るい材料もある。同社は2020年2月期の業績見通しを市場予想以上に引き下げたが、来期以降の回復期待感を背景に買いが入っている。

しかし、市場では「トランプ米大統領がツイッターへの投稿を止めるとかスマホを捨てたとか宣言すれば別だが、大統領のふるまいは変わっていない。いつまた難癖をつけられるか分からず、ノドに引っかかったものが抜けない」(さらに別の国内証券)と楽観を戒める声が少なくない。

一方、「決算発表に合わせて国内企業の自社株買いの決議が増えれば買い手に厚みがついてくる」と、東海東京調査センターのエクイティマーケットアナリスト、仙石誠氏は指摘する。

高揚感なく株価が上昇した要因の1つは、これまでの買いの主体が、国内企業の自社株買いと日銀のETF(上場投資信託)買いだったためだ。

東証データの2019年の主体別売買動向(1─9月、先物・現物株合計)をみると、日銀が約2兆6800億円、事業法人が3兆3800億円の買い越し。両者は当面売り手になる予定のない主体だ。

「日銀や事業法人は戻り売りを出さないため、恒常的に少し買いが入ると値が跳ねやすい状況となっている。投資家の反落への警戒感を生み、高揚感がないままスルスルと上がることにつながっている。根底的な買いが自社株買いと日銀ということを考えれば、大きく調整するリスクもないのではないか」と仙石氏はみる。

高揚感がないだけに、大きく失望することもない日本株市場。「低い温度」のまま、強い相場基調をしばらく維持する可能性もありそうだ。

(編集:伊賀大記)

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